【2015年3月号】 部下がやる気を出す! 魔法の言葉 part1

上司のちょっとした言葉で
部下はやる気をなくしてしまうこともあれば、
前向きになって自発的に動くようになることもあります。
どんな言い回し、言葉でコミュニケーションを図ればいいのか。
人材育成コンサルタントの吉田幸弘氏にうかがいました。

 

ちょっとした言い回しでコミュニケーションが円滑になる

もしあなたが取引先でミスし、契約を逃したとします。それを報告した時の上司のリアクションです。
A「何をやっているんだ! なんでそうなったのか、詳しく聞かせてくれないか」
B「なかなか大変だったようだね。報告をありがとう。詳しく聞かせてくれないか」
 あなたが部下ならどちらの言い方ならいい反応をするでしょうか。聞くまでもなくBでしょう。ほんの少しの言い方の違いなのですが、Aは問い詰めており、こんな言い方をされると、うまく報告ができなくなるかもしれません。それに対して、Bは報告してきたことをねぎらっており、素直に反省しながら報告できそうです。
 このようにちょっとした言い回しへの気遣いで、部下への伝わり方や反応は大きく変わります。上手な言い回しや言葉が使えるようになれば、コミュニケーションも円滑になり、部下のやる気を引き出すことにつながるのです。

 

イライラしない、笑顔を意識するそして5W2Hシートを活用しよう

報告は、部下とのコミュニケーションの大事な機会となります。
 まず大切なことはイライラしないこと。上司自身が落ち着いて訊くことです。さらに、柔らかな「笑顔」を見せることを意識して報告会に臨んでください。真面目な顔って怒っているような印象を与えますから。意識し笑顔を作ることが大切です。
 といっても訊いているうちにやはりイライラしてしまうもの。その理由は明白で、部下の報告が要領を得ないからです。するとつい「君の報告は何を言っているのかさっぱりわからない!」なんて言ってしまうのは絶対にNG。さらに要領の得ないことになってしまいます。
 そこで、報告の前に「5W2Hシート」を部下に書いてもらうよう私は提案しています。
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 このシートがあれば、要領を得ないことはある程度解消されるのでイライラせずに訊くことができるでしょう。
 

「相槌」一つでコミュニケーションが変わる

 そうして、部下の報告が始まったら、部下が話すスピードに合わせて「相槌」を打ちましょう。この相槌は、うまく使えば、部下に安心感を与える大きなツールになります。部下とのコミュニケーションや信頼関係を築くのに安心感はとても大切です。
 最初はゆっくりとした相槌を心掛けます。上級テクニックとして、話をする相手の顎の動きに合わせた相槌というのもあります。
 相槌は相手が話すのを促すものですが、承認ワードと非承認ワードというのがあります。
 承認ワードは意識して使う言葉です。「それで、それで」「それから」など、部下の話をさらに引き出したい時に使うといいでしょう。部下からの“報連相”で話す割合は部下8:上司2ぐらいが理想的。「はい、はい、はい」と3回以上の相槌は否定の意味となり、「早く話を終わらせたい」と受け取られますので注意してください。
 話を受け止める相槌は「たしかに」「なるほど」があり、これなど口癖にしてしまうのもいいかもしれません。同感を表す相槌「おもしろいね」「興味深い話だね」「そのとおりだね」などは、部下は自分の話を肯定してもらったと思い、口も滑らかになるものです。
 さらに、いたわりの相槌も大切。愚痴を聞く時、部下に非があっても「(気持ちは)よくわかるよ」と言ってもらえれば部下の気分も晴れます。悩みを相談された時には「それは困ったね」と受け止めてもらえれば、部下は「この上司は味方だ」と信頼を寄せてくるはずです。
 失敗やミス、コンペで負けた時などは「それは残念だったね」「がっかりだね」という部下の気持ちに寄り添うような相槌なら、部下も早く立ち直ってくれることでしょう。

 

部下のやる気を奪うダメなNGワード
非承認ワードは絶対に使わないようにしたい言葉です。これは部下が話し辛くなってしまう言葉。代表的なのが「でも」「どうせ」「だからさあ」です。例えば逆説となる「でも、まだ実績がないよね」とか、「どうせ、無理だろ」、「だからさあ、それは前もってダメだと言ってたでしょ」。これらは「部下のやる気を奪う3D(ダメ)ワード」と私は呼んでいます。
 その他、部下が予想外の内容や真逆の結論を話したりした時に「そんなはずはないだろう」とか、「君の言っていることは間違っている」「何を言っているのかわからない」とよく言ってしまいがちですが、これは人を認めていない完全否定の言葉なので、部下は何も言えなくなってしまいます。
 部下の話の内容や価値観が自分と違うと思った時など、非承認ワードを使ってしまいがちです。賛成はできずともあからさまに反対するのも差し障りがある、そんな時は「なるほど」という相槌が効果的です。
 ただ、「本当かよ」「何バカなことを言ってんだよ」と否定的な言葉でも、そこに笑顔があればまだ否定にはなりません。上司の言葉が少々乱暴でも笑顔で受け答えしてくれれば、部下は下を向かないで“報連相”ができるものなのです。

 

自信のない部下にやる気を出させる言葉

部下の成長につながるので仕事を任せたくとも、「自信がありません」と言う消極的な場面もよくあると思います。私も以前「そんなことを言っていたら、いつまでたっても成長できないぞ」と言ったことがありました。このようなことを言われてもやる気など出てきません。
 部下の心理としては「失敗したら叱られるんじゃないだろうか」「失敗したら評価が下がるんじゃないだろうか」というのがあります。ですから最初に「失敗しても大丈夫。俺が責任を持つから、やってごらんよ」と言ってあげます。
 また、「自信がない」と言う部下に「なんでだ?」「なぜだ?」という受け答えは避けましょう。「なぜだ?」は相手を責める印象を与えます。ここでは「何が心配なんだ?」とか「どの辺に自信がないんだ?」と訊きます。「なぜ?」ではなく「何が?」がポイントです。
 「なぜ、なぜ」を繰り返して原因究明や問題解決を図る手法があります。部下に対する指導でも、その「なぜ」の繰り返し手法を使っている人が意外と多いのですが、これは間違いです。責めている以外のなにものでもありません。この場合も「何が」に置き換えてみましょう。「なぜミスをしてしまったんだ?」ではなく「何がミスの原因になったと思う?」と言ってみることです。

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落ち込む部下には「一緒に考えよう」と「失敗談」

 今度はミスをして落ち込んでいる部下への言葉を考えてみましょう。先ほどと同じで「なんで、ミスをしたんだ?」はNGです。「なぜだ?」と訊かれても理由なんてわかりません。なぜと繰り返されるうちに、隠蔽し報告してこなくなるという問題にもつながります。どんなささいなことでも報告するようにと言われているので、ほんの小さな事でも全て報告していると「またか!」と怒鳴られる。その矛盾が隠蔽につながりますので気をつけてください。
 そこで、ミスをして落ち込んでいる場合は「ミスを防ぐにはどうしたらいいのか、一緒に考えてみようか?」と言ってみましょう。こう言われると部下は安心するようです。安心すれば「原因はここにあるようです。自分にも注意が足らなかったので、このようにしたらどうでしょうか」と反省しながら解決策を考えるようになります。
 もうひとつは、「俺も昔、同じようなミスをしたことがあるわ」と、上司が過去の失敗談を話し、失敗の自己開示をするといいでしょう。
 でもそう言うと、部下になめられるのではないかと心配する人がいます。部下が上司をバカにするかしないかの基準とは、大事な局面で「判断できる人かどうか」です。そしてそれをクライアントや自社のトップにきちんと進言できるか。それができるのであれば、たとえどんな失敗談を聞かされても上司をバカにしたりはしません。

 

繰り返すミスにはアメとムシ(無視)

 誰もが経験していると思いますが、ミスを繰り返してしまう場合があります。そういう時は、常にミスを犯しているのではないだろうかと不安が心を支配してしまいます。気持ちはそこばかりに向いてしまって、本来の仕事に集中できません。そんな時は「そこは俺が見るから」と手離れさせてあげましょう。
 また、ミスを繰り返して萎縮していると、また同じところでミスをしてしまうもの。「また間違っているだろ!」と怒鳴るとさらに落ち込んで、またミスをしてしまい、どんどんぬかるみにはまってしまいます。ミスは同じ事案で繰り返すことが多いですから、その悪循環を断ち切るためにも時には「ここは直しておいたから」とか「この部分はB君に回したから」とアメを与え、小さいミスはムシ(無視)をする。まさにアメとムシです。
 そうすると甘やかして成長しないのではと思われそうですが、やがて責任ある立場になった時には自覚するようになります。長い目で育成することが肝心。欠点を打ち消すことで長所まで一緒に打ち消さないことです。

 

打たれ弱い若者には叱り方がある

 「今の若者は叱られたことがないから打たれ弱い」とよく聞きます。叱るのと怒るのは違うということは随分と言われていますが、改めて言うと叱る基準を明確にすることです。「これをしたら俺は叱るよ」と常に言っておくことです。
 また、積極的に取り組んだけれどミスをした場合は叱らない。「あんなことをやるから失敗するんだよ」なんて言われると何もやりたくなくなります。そして叱る項目は一つに絞りましょう。「そういえば、この前は、こういうことをやっただろ」と過去のことも加算して叱るのはNGです。
 打たれ弱い部下にはアメとムシ手法で、例えば「あのミスだけど、こうしたら良くなるんじゃないか」と改善点を提示してあげたり、良かった点を褒めることです。長所を褒めて伸ばすやり方がいいでしょう。

 

【2015年1・2月号】 ドラッカーを活用して 売り込まなくても 売れる仕組みに変える方法

消費税の増税やGDPの落ち込みなど、厳しい経済状況が続く中でも、ドラッカー理論を活かせば「売り込まなくても売れる」と話す藤屋伸二さんにその仕組みと方法をうかがいました。

 

お客様に、「当社の何がいいのですか?」と訊くことから始めよう

ドラッカーは、「マーケティングとはセールスを無くすことだ」と述べています。これは「売り込まなくてはならないのは、仕組みができていない」ことを言っています。「お客様が欲しいというモノを、欲しい形にして、欲しい売り方にする仕組み」にすれば、売り込まなくてもお客様は買ってくださるという発想です。現実的には営業や販売活動がなくなることはないのですが、ただあまりにも多くの企業が自分の視点で商品を作り、自分の視点で売っています。お客様に訊かずに、自分でこういうのを作って売ればいいと思い込んでいるだけ。「何故、当社の商品を買っていただいたのですか?」と訊くことはほとんどありません。

だからお客様と噛み合わないのです。買っていただいた理由がわかれば、その理由の言葉をそのままセールスに使えばいいのです。得意先に、ああだ、こうだと説明する必要はありません。「こういうところがいいから、と当社の商品を買っていただいています」と、同じものを求めているお客様なら「そういうことをやってくれるのなら、ウチもお願いしようかな」と。これが売れる仕組みと言えます。それではもう少し詳しく説明していきましょう。

 

市場(顧客・競合状況)を知る

◎対象市場(ニーズ、顧客層)を特定する

まず、市場や競合状況を知ることです。お客様が何を求めているのか、競合状況はどうなのかを、とかく噂話はしても分析はしていません。自社が強いのはどんな顧客層に対してなのか、どんなニーズに強いのかを知ることです。

といっても、あれもこれも知ることはできないので、対象とする市場や顧客を特定しましょう。ここの部分ならよくわかる、よく知っているというところを特定するのです。例えば広告業といってもテレビやラジオでのコマーシャルから、新聞・雑誌の広告、読み物記事、交通広告、チラシ、DM、パンフレット、看板、そしてインターネット広告等々、いろんな種類があります。それらの中で「WEBのバナー広告ならよく知っている」というように特定すれば、自社の特徴も出てくるわけです。

◎競合企業(商品)との位置関係(ポジショニング)を知る

大手企業と比べるとどうしてもブランドでは負けてしまいます。自社の得意な部分、例えば短納期、柔軟な対応、徹底したアフターサービスなど、その得意なことでどのように勝負していくか。お客様にとっての自社商品の位置付けはどこにあるのかということです。そういう発想が中小企業には必要かと思います。そうすればどこに力を入れていけばいいのか、どこを攻めればいいのかが見えてきます。

 

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◎競合要因(顧客にとっての魅力や、顧客の選択基準)を知る

お客様にはどういうところに魅力を感じていただいているのか。贔屓にしていただいている理由ですね。価格なのか、品質なのか。納期なのか、種類の多さなのか。他に、デザイン、サービス、接客、柔軟性、希少性、安全性など、さまざまな事柄を訊いてみましょう。

ところがこの「お客様に訊く」ことがなかなかできないのです。自分たちで考えようとします。それでは意味がありません。アンケートに書いてもらう方法もありますが、「はい」や「いいえ」だけではその背後に潜むお客様の思いなどのニュアンスがわかりません。それに書面に書くとなると構えてしまって本音が出てこないこともあります。それでも文字に残すなら、方言で話されたらそのまま書きましょう。大阪の人が標準語で書いたって、ニュアンスは伝わらないのではありませんか。

一番いいのは「雑談」です。相手は構えませんから本音を話しやすい。「そういえば、あれはどんなところが良かったんですかねぇ?」とフランクに訊けばいいのです。

◎満足だけでなく不満も訊く

できれば、買わなかった商品についても訊きたいものです。「Aは買ったのに、なぜBは買わなかったのですか?」と。さらに「C社の商品をお買いになっていますが、それはどうしてですか?」と突っ込んで訊いてみましょう。すると「C社はすぐに持って来てくれるんだよ」とか「安かったから」と教えてくれればベスト。後は自社でそれに対応できるかどうかを考えればいいのです。対応できるのなら、次回買ってもらえる確率が高くなり、できなければ、あきらめるしかありません。得意ではないのですから。ただし、お客様が望んでいることが何もできなければ、商売にはなりませんが。

このようにお客様が「物足りないと感じていることは何だろう?」という視点から攻めていくことも大切です。逆に、お客様の不満を知ろうとせずに放っていると、そこを他社が攻めてくることもあるのですから。

いずれにせよ何に満足しているのか、何に不満を感じているのかを「お客様に訊く」こと。ドラッカーは「机の上では何もわからない。外に出て、よく観て、よく訊き、よく質問しなさい」と言っています。現場の情報にこそヒントが潜んでいるのです。

 

事業や商品の特徴を知る

◎顧客にとって自社(商品)は主役か? 脇役か?

対象市場がわかったのなら、自社の事業や商品の特徴を知らなければなりません。というのも、そんなこと当たり前だと思われるでしょうが、自社商品は誰だって「主役」だと思っています。けれど、お客様から見たらどうでしょうか? 例えば刺身と醤油なら、刺身が主役で醤油は脇役です。それが醤油と山葵なら、醤油が主役で山葵は脇役。つまり、お客様の状況やニーズによって、主役は違ってきます。

お茶っ葉でも売る側はお茶を飲むために買っていただいていると思っているでしょうが、本当にただ飲むだけなのでしょうか? おやつの和菓子と一緒に飲むのかもしれませんし、お茶漬け用に買ったのかもしれません。ならば、飲む温度も濃さも同じでは美味しくいただけないでしょうから、和菓子用、お茶漬け用のお茶っ葉があればお客様も喜ぶはず。そうした商品の提案に特徴が表れるのです。

◎主力商品と補助商品にわける

例えばコピー機が主力商品なら、消耗品のトナーやプリント用紙は補助商品です。消耗品を主力商品として売るのなら逆になります。補助商品は、主力商品にとって販促の役割があるのです。

タバコの自動販売機を見ても、たくさんの銘柄がありますが、売れ筋は数種類しかないそうです。それならば、その数種類だけを売ればいいと思うのですが、そうするとその中でも売れ筋とそうでない銘柄ができてしまうとか。つまり、主力商品を売るための販売促進の役割が補助商品にあるわけで、自社商品は主力なのか、補助なのか。さらに自社商品の中にも主力と補助にわけることが、特徴を知ることになります。

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◎魅力を創り出している自社の強みを特定する

例えば短納期が強みなら、なぜ短納期ができるのか。どんなノウハウがあるから納期を短くできるのかを特定しましょう。というのも「御社の強みは?」と訊いても「わからない」という返事が実に多いのです。何故かというと、ごく当たり前にこなしているから気付かないのでしょう。

経営セミナー『藤屋伸二の創客塾』に参加する、陶磁器用の釉薬や粘土を販売している塾生は、自分の強みがよくわかりませんでした。ですが、よくよく訊いてみると、釉薬や粘土によって焼成温度が違ってくるとかで、そのさじ加減がわかるノウハウ(強み)を持つ人はそうはいないことがわかりました。ベテランならいざ知らず、試行錯誤を繰り返す若い作家には、是が非でも欲しいノウハウです。何しろ、そのノウハウがあれば失敗も少なくて済みます。つまり、歩留まりを高めることができるので、その強み(ノウハウ)を特定することは利益率が上がることにもつながるのです。

ただ、たとえ個人が優れた技術やノウハウを持っていても、感覚でやっていれば共有や伝承はできません。その場合の「強みを特定する」とは、その人の何が凄いのかを探り、どんな技術なのかを徹底的に分析して、みんなで共有することでもあり、共有できれば会社の強みになります。

 

差別化のためのコンセプトをつくる

◎当社は「誰に」「何を」「どのように売る」ビジネスなのか?

こうして自社の商品の特徴、強みがわかってくれば、次は差別化のためのコンセプトづくりですが、ここまでくれば「誰に」「何を」「売っていくのか」が明確になっているはずです。

例えば札幌で世界の壁紙を売るお店があるのですが、5,000種類ほど取り揃えています。日本では一度貼ったらあまり替えませんが、海外の壁紙は自分で貼って剥がせる。子どもが幼稚園、小学校、中学校と、成長するにしたがい替えていけます。簡単なので春夏秋冬で替えることも。つまり、住まいを手軽に安くイメージチェンジできるわけです。店に来るお客様は3時間も4時間もかけて壁紙を吟味しています。楽しいから時間がかかっても苦にならない。誰に、何を、どのように売っているかが明確にできている好例といえます。

誰に、何を、どのように売るかが明確になれば、それでビジネスモデルが出来上がります。つまり、コンセプトを作るということは、ビジネスモデルを作ることでもあるのです。

◎キャッチコピーをつくる

例えばニトリのコンセプトは、「欧米並みの住まいの豊かさをリーズナブルな価格で売ること」です。だからそのキャッチコピーが「お、ねだん以上。ニトリ」となるんですね。吉野家の「うまい、やすい、はやい」はコンセプトでもあります。「お口の恋人ロッテ」「自然を、おいしく、楽しく。KAGOME」「100人乗っても大丈夫(イナバ物置)」「ココロも満タンに(コスモ石油)」など。自社の特徴や強みがわかれば、キャッチコピーも決まってきます。

◎3つの魅力を打ち出す

先の吉野家の「うまい、やすい、はやい」は、食事に時間を使いたくない人にとって、まさに3つの魅力です。

3つの魅力を打ち出す際、「どんなお客様に好かれているのか」のみならず、「どんなお客様に嫌われたいのか」まで考えれば、ターゲットも明確になります。ここまでくれば、しゃかりきになって売り込まなくても、売れる仕組みが出来上がってくるのではないでしょうか。

【2014年12月号】 「朝礼」で 元気な会社に しよう

多くの会社で当たり前のように、行われている朝礼。
いつの間にか社員が下を向いてしまっているような朝礼になっていませんか?
社員がイキイキとし、組織が活性化するような「朝礼」があるのです。
朝礼改善指導を通じた組織活性化で実績をあげる朝礼コンサルタント・城田真吾氏にアドバイスいただきました。

 

朝礼の本来の目的は、企業のあるべき姿へ向かわせること

あなたの会社の朝礼は、社員が前向きに仕事に取り組むようになり、モチベーションがアップするような朝礼でしょうか? そんな朝礼を実現させるために必要なのは、まず朝礼を何のためにやるのか、という目的が明確であることです。その目的とは、端的に言えば「企業のあるべき姿を達成すること」です。企業の全ての活動はあるべき姿の達成にあり、サポート機能として、朝礼があるといえます。つまり、企業のあるべき姿を達成するためには、どのような朝礼にすればいいのか。「逆算した朝礼」、「あるべき姿と現状の差を埋める朝礼」を私は提唱しています。

例えば飲食業界で「居酒屋てっぺん」さんの朝礼は有名です。スタッフ一人ひとりが自分の夢を大声で語ります。こういうスタイルになったのは、目的がありました。居酒屋というのはサラリーマンたちが愚痴を言う場であることが多い。それを、愚痴ではなく「居酒屋を、夢を語る場にしたい」、そして「居酒屋から日本を元気にしたい」という願いがあったのです。だからこそ、お客様に夢を語ってほしいのなら「まず自分たちが夢を語ろう」、日本を元気にしたいのなら「まず自分たちが誰よりも元気になろう」というところから、あの元気満点の朝礼のスタイルが形作られたのです。

みなさんの会社では、「朝礼“を”やる」ことが目的ではなく、「朝礼“で”あるべき姿を達成」のイメージを持った朝礼をやっていますか? 私が問い掛けたい点は常にこれなのです。

では、どんな企業、職場でも「てっぺん」さんのようなスタイルがいいのでしょうか。極端ですが葬儀会社の職場で「自分の夢は・・・」「いらっしゃいませ!」なんて絶叫できません。それは企業としてあるべき姿が違うからです。それぞれの企業、職場に合った「らしさ」があります。朝礼にはその「らしさ」も大切なのです。

 

たかが朝礼、されど朝礼こんな朝礼が社員をダメにする

よくない朝礼というのをみていきましょう。
まずは管理するための朝礼というのは避けたいものです。よくあるのが「もう下旬なのにこのままだと今月の目標達成は難しいぞ」といった営業活動の進捗状況を詰め寄る管理型朝礼です。上司としてはいろいろ言いたいでしょうが、それは会議やミーティングで行うことだといえます。また、やたらと社長の話が長いのも良くありません。いずれも社員たちは次第に下を向き、「早く終わらないかな…」と思ってしまう朝礼はいけません。
さらに、発表スタイルの朝礼の場合、マイナスの後ろ向きの内容も避けましょう。例えば「昨日、お客様からこんなクレームがありました」とか。先ほどの営業活動の管理型もそうですが、どうしても言っておきたいのなら、夕礼でするほうがいいでしょう。
こうした朝礼では、エネルギーが出ません。「今日一日頑張るゾ!」というエンジンがかからないのです。
ある自動車整備工場の事例です。毎朝ラジオ体操をするのですが、覇気がなく、動きもバラバラ。そこで声を出し、動作も揃え、真剣に体操するようアドバイスしました。朝の体操はそれなりの意味があります。工場ですから安全第一が大切。
動きが緩慢になるのは事故のもとですから、よく動けるよう身体をほぐし、さらに体操で自分の身体の調子も点検できるはずです。
体操に限らず、声や動作を合わせることも大切なポイント。少年野球などを見ていると、掛け声を合わせ、円陣の動作なんかも合わせます。声や動作をシンクロさせれば、一体感が生まれます。すると職場では部下たちの調子の良い悪いなどの変化に気付きやすくなるのです。ということは指導やアドバイスも的確に行うことができるというわけです。

 

良い朝礼とは――ビジョンや理念を唱和しよう

次に良い朝礼ですが、最初に申しました「あるべき姿」である、ビジョンなり、理念なりを浸透させることです。その方法として、「唱和」することで潜在意識に刷り込ませます。呪文のようになろうと繰り返し唱和することです。組織のベクトルが次第に合ってきます。そのうち、例えば居酒屋で同僚たちと飲んでいて「君の考え方はうちの理念に合ってるな」と、ポロッと無意識に言ったりするものです。そうなるくらいに唱和しましょう。
そうして次の段階としては、唱和する内容に対して具体的な取り組みを、朝礼で発表してもらうようにします。唱和したビジョンが、具体的な行動に表せているかが大切なのです。でないと唱和がお題目になってしまい、あるべき姿へ向かう活力へつながっていきません。
さらに、潜在意識に刷り込まれると、次第に自分たちの次の行動を考えるようになります。あるべき姿を実現するためには、何をしなければならないのか、と目的に向かって皆の意識が集中し、自主性が生まれるのです。この自主性が出てくるような朝礼こそ理想といえるかもしれません。
また、唱和することで、実は会社を辞める社員が出てきます。これは「この会社の目指すべき姿は、自分が望んでいたものとは違う」ことに気付くからです。会社は万人受けするカジュアルなモノを作っていきたいようだが、自分はもっと消費者一人ひとりにとって特別なモノを作りたい、とか。これは決して悪いことではありません。社員が辞めることはマイナスなことですが、永い目で見ればお互いにとってプラスになるはずです。これも刷り込まれた結果、自主性が出てきた証拠といえるでしょう。

 

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良い朝礼とは――「感謝」を語ろう
人はとかくマイナス的な事に関心を強く持つようです。インターネットのニュースでも、悲しい事件や著名人のスキャンダルはどんどんクリックして深追いしてしまいます。逆の良い事はどうでしょうか。以前朝礼で「最近気になった良いニュースはありませんか?」という問い掛けに、誰も手を上げなかった経験がありました。
普段から良い事を見る癖をつけたいものです。おススメしているのは「Good&New」というものです。これは24時間以内の良かった出来事、新しく気付いた事を発表します。
これに加え、私が提案しているのが、毎日テーマを変えて、この1週間で「感謝した事」や「感謝した相手」等を発表してもらう朝礼です。「Aさんのおかげで仕事がはかどりました。ありがとうございます」とか「今日も電車がいつも通りに運行してくれて無事に通勤できて有り難いです」など。この「有り難い」という言葉は、「有るのが難しい、あり得ない事」ですよね。反対語は「当たり前」です。「世の中は何事も当たり前ではない」ということに気付き始めると、いろんな事が感謝の対象になってきます。不平不満からは何も生まれません。感謝すると仕事にもプラスの作用が生まれるのです。また、「Good&New」で互いを知ることができるので、仕事のカバー率が高まってきます。

 

感謝」はミスを減らし、仕事の効率を高める

感謝の気持ちが作用する効果としては、たとえお客様から理不尽なクレームがあったとしても「クレームをもらえるだけ有り難い。理不尽だけれども、この要求には我々が改善できる点があるはずだ」と前向きに捉えられます。自分たちの改善点を探そうとするのです。感謝の視点がなければ、「何を言うか! あのお客が悪いのだ」とくさるだけ。次に起こすアクションには雲泥の差が出てくるでしょう。
 私がコンサルティングした事例ですが、総務や経理の事務方というとお客様からあまり感謝される存在ではありません。営業は偉いけれど総務や経理は裏方だと。けれど、裏方の支えがなければ表では戦えません。そこで週に1度、事務方の朝礼に営業マンを連れて来て、総務や経理への感謝を述べてもらいました。すると変化が起きたのです。事務方のミスは軽減し、書類作りのスピードがアップしたといいます。もちろん、営業マンも総務や経理の存在を再認識できました。感謝されると、人はモチベーションを高めるのです。
 中小企業にとっての大きな課題は「いかに人を育てるか」だと思います。朝礼はたかだか10分としても、1年間合計すると約40時間。結構な時間があることになり、一つの教育研修と考えてもいいのではないでしょうか。モチベーションをアップさせ、感謝の気持ちを持ち、前向きに仕事に取り組むようになる。そんな朝礼に変えてみたいと思いませんか?