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【2019年5月号】昭和世代とは違う「ゆとり世代」を解明!イマドキ社員たちの 扱い方マニュアル Part2

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「ゆとり世代」に代表されるイマドキ社員の扱い方、接し方が難しいと悩む、昭和生まれのトップやリーダーが多いと社会保険労務士でもある経営コンサルタントの大庭真一郎氏は語る。前号ではその背景を探ったが、今回はイマドキ社員たちの扱い方、対応の仕方をアドバイスしていただいた。


 
 
■イマドキ社員たちを定着させるために
 
これからお話する内容を耳にして、もしかしたら「なぜ自分たちが若い人たちにそこまでやらなければいけないのか?」と疑問に思われるトップやリーダーがおられるかもしれません。しかし、よく考えてみてください。昨今の人材獲得については売り手市場です。苦労して確保した若い人たちは将来の会社を担う人材なのに、大卒新入者が3年で3割も辞めてしまう現状があります。そんなイマドキ社員をなんとか定着させないといけません。それは全社を挙げて取り組むべきことといえます。今回の「扱い方、接し方」はそのヒントになればと思います。
 
 
■イマドキ社員たちとのコミュニケーション方法
 
― その①イマドキ社員たちが望む方法で連絡する
まずは連絡方法です。今の若者たちは、物心がついたときから、メールやSNSでの連絡が当たり前の世代です。ビジネス現場で連絡に関して大事なことは「すぐに連絡すること」であり、手段は二の次といえます。電話より慣れているメールやSNSでの連絡を受け入れてみましょう。「電話で連絡すべきだ」というのは、メールやSNSが普及していなかった時代に育ってきた人の考え方に過ぎません。
例えば、明日の待ち合わせ時間が変更となりました。出先からそのことを連絡する場合、スマホのラインやメールで伝えてみるのです。また、お互いが社内にいても、簡単な連絡事項ならメールで送ってみます。普段は話しベタなのに、メールだと意外と饒舌になる人もいるのです。
上司や先輩社員たちがイマドキ社員たちの望む方法でコミュニケーションを取ることを受け入れることで、意思の疎通を図りやすくなることもあるようです。
 
― その②上司のほうから頻繁に声掛けをする
インターネットを通じた人間関係に馴染んできたイマドキ社員たちは、現実の世界では他人に対して遠慮しがち。自ら進んで上司に報告・連絡・相談を行うことに対してもためらいがちになります。
そんな彼らには、上司のほうから声掛けを行うことが効果的です。そこで提案したいのが具体的な仕組みを作ることです。例えば、上司や先輩による「相談タイム」を設けてみてはいかがでしょうか。入社後1カ月間は定時時刻前の15分間を新入社員のためにいろんな相談にのるといったようなことをしてみるのです。自分からはできなくても、相談の時間が設定されていれば、ためらわずに話しやすくなるのではないでしょうか。
 
 
■イマドキ社員たちへの伝え方
 
― その①分かるように指示を与える
“オンリーワンであることが大切”と言われて育ってきた今の若者たちには、納得しないと行動しないタイプが少なくありません。このようなイマドキ社員たちにきちんと仕事をしてもらうためには、「分かるように指示を与える」ことが重要です。
①具体的に伝える:このような理由で、何について、いつまでに、どのようにしてほしい、と誰が聞いても同じように受け取れる内容にまで落とし込んだ指示を行う。
②ゴールの形を具体的に伝える:指示したことをやり遂げた場合にどのような結果が生まれるのかを伝える。
③やり方だけではなく仕事の仕組みを教える:業務全体の流れと担当する業務の位置づけを教える。
 
― その②相手に伝わるまで説明する
自ら進んで上司に報告・連絡・相談を行うことをためらいがちなイマドキ社員たちは、指示されたことを飲み込めていなくても、その場で確認をせずに、誤った仕事の進め方をしてしまうことがあります。「はい。わかりました」と答えても理解できていない場合があるのです。
繰り返し伝え、相手が指示した内容を本当に理解しているのかを確認することも重要です。復唱してもらってもいいでしょうし、指示に対してどのような行動をとろうと考えているのかを、答えてもらうなどすれば理解度を確認できるでしょう。
 
― その③指示を与えた後も面倒を見る
前述したように、「詳しく説明したのだから、後は、きちんとやってくれるはずだ」と過信するのは禁物です。指示を与えた側の人間が、イマドキ社員たちの仕事ぶりに目を光らせ、仕事をやり遂げるまで積極的に面倒を見ることが必要でしょう。つまり、適時なアドバイスです。そうすれば、イマドキ社員たちとの意思の疎通を円滑にし、本人の能力の向上にもつながっていくはずです。
ただし、イマドキ社員たちはすぐに答えを求める傾向が強いため、1から10までアドバイスするのではなく、本人に考えさせるプロセスを設けましょう。
 
― その④残業は、残業の必要性を考えさせる
残業を指示する場合は、イマドキ社員たちは自分の時間を大切にしたいという意識が強く、残業を嫌う傾向にあります。一方的に残業を指示しても、本人は納得して動きません。そこで、「残業の必要性」を考えさせることが大切です。
「なぜ、残業をしてまでこのことをやらなければならないのか」、「今、残業してこのことをやることが今後にどう影響するのか」などについて考えさせ、本人が納得すれば、イマドキ社員たちは自発的に残業もするようになるでしょう。
 

 
 
■イマドキ社員たちへの接し方
 
― その①雑に扱わない
上司や先輩社員たちの中に、「新人は社内で一番下の人間である」、「新人は戦力にはならない」などといった意識があり、意図的に雑用のようなレベルの低い仕事ばかりを新人に与えがちです。
そのような扱い方をされると、理想やプライドの高いタイプが多いイマドキ社員たちは、ストレスを感じて、嫌気がさし、離職することを考えるようになってしまいます。
一人の戦力として認め、任せられる仕事は積極的に任せていきましょう。すると、イマドキ社員たちも自分が期待されていることを感じ取り、意思の疎通を積極的に図るようになるはずです。
 
― その②過剰に気を遣う必要はなし
先の雑に扱ってはいけないからとか、辞められてはたまらないからと恐れるあまり、腫れ物に触るような感覚で彼らに接するのは本末転倒です。
人を使う側は、イマドキ社員が何人いようと、組織の中での役割分担を決めて効率的に人を動かし、組織としての成果を追い求めるためのマネジメントを行わなければならないことに変わりはありません。なのに気を遣ってばかりでは、イマドキ社員たちは、いつまで経っても成長しませんし、会社や上司、先輩社員たちに対して距離感や不信感を抱くことで、離職への引き金にもなりかねません。
 
― その③過去の自分と比べない
「オレが新人のときは、このようなことは当たり前にやっていたのに、なぜできないのか(なぜやらないのか)」などと、過去の自分と比較しながら叱責するのは禁物です。なぜなら、過去の自分と比べた発言は、相手のことを全面的に評価しないことへとつながり、イマドキ社員たちは上司とのコミュニケーションをとるのに嫌気を感じてしまうでしょう。
過去の自分と比べるのではなく、イマドキ社員自身の過去と今とを比べて、「できていること」や「できるようになったこと」を認めてあげる姿勢が重要です。
 
― その④イマドキ社員のタイプに合わせた接し方
昨今の若者は、報酬や出世への欲望は薄れつつありますが、成長したいという欲求は、昔と変わらずにあるようです。
イマドキ社員のタイプを知り上手に導けば、自発的に行動し、成長していくものです。
【導き方の例】
▶協調性のあるタイプは、協調性があることを褒めた上で、今後の進むべき方向性を指し示す。
▶客観的に物事を判断するタイプは、現実的な対応ができていることに対して信頼していることを伝えた上で、今後の進むべき方向性を指し示す。
▶批判的な態度を取ることの多いタイプは、上司が部下の言うことにきちんと耳を傾けるという姿勢を示しながら、今後の進むべき方向性を指し示す。
▶自分を表に出さないタイプは、声掛けする回数を増やした上で、今後の進むべき方向性を指し示す。
このような形で導くことで、本人が仕事を通じて成長していることを実感することができれば、モチベーションの向上にもつながることでしょう。
 

 
 
■イマドキ社員たちのヤル気の引き出し方
 
― その①帰属意識を持たせる
イマドキ社員たちには、会社組織に馴染めないタイプが多いようです。「自分は組織の一員であり、組織から必要とされている人間なのだ」という帰属意識を持たせることが、彼らのヤル気を引き出し、成長させることに対して効果的です。
そのためにも、確たる根拠のない古い価値観や考え方を押し付けることは避けたいものです。
【イマドキ社員たちに対するNGワード】
▶世の中とはそういうものなのだ。
▶そういうのが社会人としての常識なのだ。
▶若いうちは下積みの仕事をするのが当たり前だ。
▶オレが若いときはもっと大変だった。
▶そんなことくらい自分で考えろ。
イマドキ社員たちには、一昔前の「サラリーマンとは、このようなものなのだ」的な感覚は通用しません。
 
― その②自己実現の欲求に火をつける
イマドキ社員たちのヤル気を高めるには、彼らは理想やプライドが高いので、「仕事を通じて自己実現をしたい」という欲求に火をつけることが効果的です。
【自己実現の欲求に火をつけるプロセス】
▶最初のうちは、「やらないと叱られるから」、すなわち仕方がないからやるという感覚で仕事をしている。
▶そこで、「自分の背負った役割は果たさなければならない」という使命感や責任感を植え付ける。
▶使命感や責任感が芽生えたならば、きちんと行動できていることを認めることで、認められることに対する喜びを感じさせる。
▶そこまでくると、「仕事を通じて自己実現をしたい」という欲求が生まれてきて、彼らの中でヤル気が高まり、理想に向かって自発的かつ積極的に行動するようになる。
 
― その③働きに応じた公平な評価をする
イマドキ社員たちには納得しないと行動しないタイプが少なくないので、働きに応じた公平な評価をすることが重要です。
それには、本人の能力や環境に応じた無理のない適正な目標を設定し、それに対する達成度に応じた評価を行うのです。
一昔前のように、上から一方的にノルマを課し、それに対して杓子定規的な評価を行うやり方には、イマドキ社員たちは納得しません。そのようなことを続けていると、会社に対する不満や不信が募り、ヤル気を失ってしまうでしょう。
 
― 最後に
イマドキ社員たちが別に特殊な人間だというわけではありません。彼らの価値観というものがあり、それが一昔前のものとは異なるというだけの話なのです。イマドキ社員たちを使う側の人間が、いかに彼らのヤル気を引き出し、能力を高め、組織の一員として機能させるかというマネジメントに起因する問題です。能力とヤル気を高めることができれば大きな戦力となりうることに変わりはありません。
つまり、身の回りにいる彼らがどのようなタイプの人間なのかを知ろうと、上司自らの行動を変えていくことが求められるのです。