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【2018年9月号】好感度が上がる10の心理学テクニック

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誰でも、クライアントに印象良く思われたいと願うはずだ。特に「初対面」では緊張するだけに失敗はしたくない。そこで、「ビジネス心理学講師」として全国で年間100以上の講演をこなす経営コンサルタントの酒井とし夫氏に、初対面で役立つ好感度アップの心理学テクニックをアドバイスしてもらった。


 
Technique 1
◆鏡を見れば見るほどに、あなたは魅力的になる
 
「初対面」の相手との商談を想定してみましょう。経験を積んでいても緊張はするもの。そこで、商談前にお勧めしたいのが「鏡を見る」ことです。
心理学の実験で、鏡を見ないでいると次第に自分の容姿だけでなく、周囲のことにも無関心になり、その結果、無気力になるという実験結果があります。
逆に鏡を多く見る人は、自分が周囲からどのように見えているのかを気にする「公的自己意識」があります。これが強い人ほど、どのように自分が魅力的に見えるかに熱心なので、その結果として、どんどん魅力的になっていくというわけです。
内面は信念や意志、経験で磨くしかありませんが、外見は鏡1枚あれば磨けます。私の知っているトップ営業マンは、常に鏡を携帯し、自分の容姿をチェックしていました。初対面の相手には、まずは「見た目」が大切です。
 
 
Technique 2
◆自己紹介は、まず良い情報から
 
「初対面」では、人は相手の全体像を瞬間的に捉えて、「この人は親切そう」とか、「雑な感じがする」といった漠然とした印象を作り上げます。その印象は時間とともに増幅されることがわかっており、このことを「初頭効果」といいます。
そして、その感じた印象を裏付ける情報を集めるようになり、「やっぱり最初に思ったとおりだ」と自分の正しさを確認しようとします。これを「確証バイアス」と呼びます。心理学者ソロモン・アッシュが行った有名な「印象形成実験」があります。2つのリストを被験者に示して答えてもらうというものです。
リストA:「彼は、知的で、勤勉で、衝動的で、批判的で、嫉妬深い人」
リストB:「彼は、嫉妬深く、衝動的で、批判的で、勤勉で、知的な人」
どちらが好印象だったかと訊くと、Aと答えた人が多かったのです。つまり、最初に好ましい特性を提示すると相手に対する印象は好意的なものになる傾向があるわけです。
ですから、第一印象を良くするには、自己紹介では自分の良い情報をまず提示しましょう。但し、自慢にならないよう強調し過ぎてはいけません。
 
 
Technique 3
◆共通項があると、好意を抱かれやすくなる
 
人は趣味や考え、境遇の似た者同士は親しくなるという「類似性の法則」があります。例えば、名前、出身地、誕生日、年齢、血液型、卒業校、趣味など。実際、同じ誕生日だと見知らぬ人からの依頼でも承諾する率が高いという実験結果もあります。初対面のお客様でも、あなたと何かしらの「関連」「類似性」「共通項」があれば、お客様はあなたに好意を抱きやすくなるということです。
そこで私は「“木戸に立ちかけし”衣食住」を利用しています。これはお客様との会話の糸口になるキーワードを並べたもの。
〔き〕気候や天気
〔ど〕道楽や趣味
〔に〕ニュース(時事、経済、スポーツニュース等)
〔た〕旅
〔ち〕知人や友人
〔か〕家庭
〔け〕健康、身体、病気
〔し〕仕事
このキーワードを使えば、あまり話が弾まない相手でも話のネタに困りません。これらの話題で雑談をしながら相手との共通項を探してみるのです。
 
 
Technique 4
◆相手のしぐさに合わせてみる
 
さらに「初対面」で使えるいくつかのテクニックをご紹介しましょう。
まずは、相手の姿勢や身振り、身体の動きに合わせる「ミラーリング」。例えば、手が机の上にあるか膝の上にあるか、足を組んでいるかいないか、椅子に腰を掛けているのは浅いか深いか、前かがみか後ろに反っているかとか。さらに首の傾き、手の動き、呼吸などに自分の動作を合わせてみるのです。
次に「ペーシング」。相手の声の大きさ、速さ、トーン、テンポ、高低、リズム、感情の明るさや暗さ、熱意、静けさに合わせます。 
「バックトラッキング」も相手に気に入られるテクニックです。これは〔おうむ返し〕のことで、相手が今話した会話の語尾を繰り返す、相手の会話のキーワードを使って返す、相手の会話を要約して返す、といったことをしてみましょう。
これらのことを相手に気付かれずに行うと、あなたに対して、「なんだかこの人とはペースが合う」「気が合う」「波長が合う」という状態を作り出し、良い印象につながるわけです。
 
 
Technique 5
◆相手の隣に移動すると、心理的距離が縮まる
 
私たちは自分の周囲に、他人が侵入してくると不快感やストレスを感じる「個人空間(パーソナル・スペース)」を持っています。アメリカの文化人類学者エドワード・ホールは、その個人空間を次の4つに分類しています。
 
①密接距離(0〜45㎝)/家族や恋人同士の距離で、それ以外の人がこの距離に近づくと不快感を抱きます。
②個体距離(45〜120㎝)/手を伸ばせば相手に届く、親しい友人同士で会話するような距離です。
③社会距離(120〜360㎝)/相手の身体に触れることができない距離です。上司と部下が仕事の話をするときの間隔です。
④公衆距離(360㎝以上)/大きな会合や集会、講演会等の距離です。
 
こうした個人空間をうまく使えば、お客様との良好な関係づくりに役立ちます。
商談となれば③の社会距離が多いでしょうが、親近感をさらに深めたいのなら、②の個体距離にしてみます。例えば、資料を見せる場合に、相手の隣に移動して「ちょっとここを見てもらえますか」と指差して説明するわけです。手にできる商品なら相手に持たせるなど、相手との心理的距離を縮める行動を意識してみましょう。

 
 
Technique 6
◆相手の視線で、心を読む
 
視線には人の心の内が表れると言われ、視線の動きは、脳のどこかにアクセスしているのです(右利きの人の場合。左利きの人はこの反対)。
◆左上に視線が動く:記憶する過去の視覚イメージ(映像)にアクセスしている
◆右上に視線が動く:未来を創造する視覚イメージにアクセスしている
◆左横に視線が動く:記憶する過去の聴覚的記憶(音や言葉)のイメージにアクセスしている
◆右横に視線が動く:未来を創造する聴覚的記憶(音や言葉)のイメージにアクセスしている  
◆左下に視線が動く:内的対話(過去の感情や記憶)にアクセスしている
◆右下に視線が動く:身体的にアクセスしている
これらを「アイ・アクセシング・キュー」といい、相手の視線の動きで、「今、この人はこういうことを考えているな」とある程度の推察ができるというわけです。
視線が上を向くことが多いのなら、言葉や資料で説明するより、商品の写真やイラストを見せるほうが納得してもらう確率が高まるでしょう。
視線が左右に動くのなら、論理的な言葉での説明や他のお客様の感想を聞かせるほうがいいかもしれません。また、視線が落ちる場合は身体で何かを感じたり、心の中で対話をしていると思われるので、あまりせかさずに考える時間を与えるといいでしょう。
 
 
Technique 7
◆人の噂話は、自分の評価になる?
 
アメリカの大学での心理学実験です。役者を使って「彼は動物嫌いで、子犬を蹴飛ばすのを見たことがある。本当に嫌な奴だ」と第三者の噂話をするシーンを撮ったVTRを被験者に見せて感想を訊きました。すると、被験者の共通した感想は、噂話の話し手(役者)を嫌な人間だと感じたことでした。
これは、誰かが第三者の噂話をしたとき、聞き手は無意識のうちに「話し手」を「第三者」に重ね合わせてしまう「自発的特徴変換」と呼ばれるもの。
あなたが「あの人はいつも朗らかな人だけれど、本当は冷たい人なんですよ」と言えば、聞き手は無意識にあなたを「本当は冷たい人」と見るようになるのです。
ですから、商談やクライアントとの打ち合わせで第三者を揶揄するような噂話や、確証のない情報提供‒「S社の部長さんて、誠実そうに見えて実際は無理難題を押し付けるので有名ですよ」‒と話すのはNG。言ったことが自分のイメージになるので、自分の評価がダウンします。逆に人を褒めると自分の評価はアップするわけで、「あの人は誠実な人ですよね」とポジティブな噂話ならいいでしょう。
 
 
Technique 8
◆あいさつにひと言添えると、印象が強くなる
 
商談が終わったとき、なんと言って締めますか?普通は「それでは良いお返事をお待ちしております」でしょう。心理学テクニックとしては、何気ないあいさつでも、印象度を上げたいもの。そこで、「それでは良いお返事をお待ちしております。期待しておりますので!」と、基本のあいさつに「もうひと言」を付け加えれば、相手の印象に深く残ります。
「初めまして。今日はお会いするのを楽しみにして来ました」
「今日はありがとうございます。御社にお声掛けをいただけるとは本当に光栄です」
初対面なら印象付けることはとても大切です。
 
 
Technique 9
◆商談や打ち合わせは、玄関を出てしまうまで気を抜かない
 
終わり良ければすべて良しは、ビジネス現場でも同じです。
北陸の有名なある繁盛店の社長に「お見送り七歩」という言葉を教えていただきました。お客様が帰るときはただその場に立ってお見送りするのではなく、お客様に寄り添いながら七歩歩いて最後までお見送りをしなさいとのことでした。
私がこれまで出逢った繁盛店の共通項は、最後の印象が良いという点だといえます。心理学では「親近効果」といい、人は経験の最後の印象がもっとも記憶に残りやすいというのです。食事が楽しかったとしても最後のレジ係の対応や愛想が悪いと、結局そのお店全体のイメージがダウンしてしまいます。繁盛店では、接客能力の高いスタッフをレジ係に配置するのも共通項の一つです。
いい雰囲気で初対面との商談を終えても、退室するときにドアをバタンと無造作に閉めてしまったがために印象が悪くなってしまった。そんなことがないように、商談が終わってもあなたは玄関を出てしまうまで気を抜かないことです。
 
 
Technique 10
◆接触を重ねると印象度が上がる
 
こうして初対面のお客様との商談をクリアしたとしましょう。さて、その後はどうするか。連絡が来るのを待ちますか?
人は目にする、触れる、会う回数が多いものに好感をもつ「熟知性の原則」や、4回以上の接触をすると好意や信頼性が生まれやすい「単純接触効果」というのがあります。
私の師である竹田陽一先生は「2:8」、「5:8」とよく言いました。「2:8」は2回しか会わない人の8割は不成約となり、5回会う人が全契約の8割を手にするというものです。昔の御用聞きでお得意の職場にただ顔を出すというのも、それなりに意味があったのです。「あっさりと、しつこく」。これがコツと言えるでしょう。ぜひ、試してみてください。
参考:酒井とし夫著『心理マーケティング100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)