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【2017年12月号】ドラッカー理論を活用!既存事業を儲かるビジネス・モデルに劇的に変える!

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既存事業の建て直しや方向転換は、新規事業の立ち上げよりも難しいといわれる。
しかし、ドラッカー理論の専門家でもある経営コンサルタントの藤屋伸二氏が提案する「変えたらシート」を活用すると、素早く取り組むべき方向性が見えてくる。
その「変えたらシート」とは?

ドラッカー理論を活用!既存事業を儲かるビジネス・モデルに劇的に変える!

 
事例①「対象市場・顧客」を変えてみる
 
 現在の事業が頭打ちだとか、伸び悩んでいるというのはどの企業もあることでしょう。それが本業なら深刻です。
 そうした状況にあるのなら、「変えたらシート」を活用してみてはいかがでしょうか。これはドラッカー理論をベースに私が考案したもので、セミナーやワークショップで好評を得ているマネジメント・ツールの一つです。
 まず、表①のオフィスグリコを例に見てみましょう。
 このシートを活用する場合はまず、「現在の状況」を縦の列に書き込みます。グリコ商品の本来の対象市場・顧客は「子ども」がメインです。提供する価値は「夢、栄養補助」、商品・サービスは「自社のお菓子と飲み物」、提供方法は「流通業者経由」になるでしょう。
 そして「変えたらシート」の一番重要な点は、アミ部分の項目を別のものに変えてみることなのです。
 表①では対象市場・顧客の「子ども」を「ビジネスパーソン」に変えてみれば、他の項目もそれに伴って変わっていきます。
(提供する価値)夢、栄養補助⇒リフレッシュ
(商品・サービス)自社のお菓子と飲み物⇒他社商品も含む食べ物・飲み物
(提供方法)流通業者経由⇒直接
(流通チャネル)卸業者・大規模小売店⇒企業にボックスを設置
(時間・スピード)都度⇒定期的
(数量)大量⇒数個
(価格)商品ごと⇒100円均一

というように、商品を構成する状況の要素は全て変わってしまいました。
 アイス、野菜ジュース、栄養ドリンクもラインナップにあり、お菓子や甘いモノというと女性が好みそうですが、職場で手軽に買えることもあり、実際のオフィスグリコの利用者の7割は男性といいます。単に小腹が空いたからとか、お菓子が好きだからというだけではなく、デスクワークや外から帰ってきた男性にとってのお菓子は「リフレッシュ」するツールとなり、それで大ヒットしたのです。
 
 
事例①「対象市場・顧客」を変えてみる
 
 
事例②「提供する価値」を変えてみる
 
「提供する価値」を変えてみる
 次に表②のマンナンライフ・蒟蒻畑の成功をこのシートに当てはめてみると、2の「提供する価値」を変えたことになります。
(対象市場・顧客)食材⇒ダイエット
(提供する価値)料理の具材で脇役⇒ダイエットの主役
(商品・サービス)食材としての蒟蒻⇒ダイエット食品の蒟蒻
(提供方法)流通業者経由⇒流通業者経由
(流通チャネル)食材売り場⇒健康食品売り場
(時間・スピード)都度⇒常用
(数量)1個⇒1袋〜
(価格)70円⇒145円〜
 従来は料理の具材の脇役だったものに、「ダイエットの主役」という新しい価値に変えることにより、価格も従来より高くなりましたが、消費者に大いに受け入れられたのです。
 
 
事例②「提供する価値」を変えてみる
 
事例③成功した事業や製品をシートに当てはめてみると
 
 前述の事例①②のように「現在の状況」の項目を変えるとどうなるのかを、実在の商品や事業を簡単に紹介したのが表③です。
 事務用品を中心とした通信販売会社のアスクルの場合は、この業界では3番手、4番手の位置付けになります。ですから、「提供方法」は流通業者経由としていましたが、その業者にもなかなか相手にしてもらえませんでした。
 そこで、零細企業を対象にインターネットを通じて直接売ることにしたのです。零細企業では事務用品を買いに行く人員もいませんから、インターネットで注文するのが一番効率的で手っ取り早いのです。そして、「流通チャネル」も卸業者だったのを、地域をよく知る文具店に営業代行してもらい、カタログ販売としたので多品種・小ロットとなり、薄利多売だったのが適正利益となって実績を上げることができています。
 星野リゾートの場合は、商品・サービスの項目である宿泊を、「運営指導・運営代行」に変えたんですね。すると、対象としていた市場・顧客も、消費者から「同業他社」へと変わるビジネス・モデルを作り上げました。
 エスエス製薬のハイチオールCは、流通チャネルの変更で大きく変わりました。マツモトキヨシの登場で薬局・薬店の販売力が一気に減退し、ドラッグストアでの販売へとチェンジしました。その一方で「美白ブーム」がおきます。それまで二日酔いや倦怠回復向けだったハイチオールCを、シミ・そばかす対策といった美容・美白という価値を付けて、対象顧客も中・高年の男女から「美しくなりたい女性」とします。さらに、飲み方も以前は朝昼晩に分けてたくさん服用していたのを、若い人は薬には抵抗があるので、1日数粒に減らしました。すると横ばいだった売り上げが3倍にもなったといいます。
 
 
事例③成功した事業や製品をシートに当てはめてみると
 
 
商品名を変えるだけでも、劇的に変化する
 
 こうして今売れている製品やサービスを見ると、「変えたらシート」に当てはまる事例は他にもたくさんあります。そうした事例を見ていけば、このシートの使い方もよりわかってくることでしょう。
 例えばトランプは、ポーカーなどのギャンブルの道具でした。それを任天堂が、「子ども向けのおもちゃ」に変えて、あらゆる世代、世帯に広がる商品に育てました。
 ホテルグリーンコアというホテルは、普通のビジネスホテルならベッドが当たり前ですが、ベッドではなく布団を敷いて寝てもらう家族向けに変えて話題となりました。するとそれまで30%の稼働率が、80%になったそうです。
 高知県にある、ひだか和紙は、文化財の引っ越しや移動する際は、和紙で包んで運ぶのがもっとも適していることをアピールして、文化財保護という超ニッチ市場を開拓しています。 
 フランスでは世界遺産に登録されたブドウ畑に、多くの観光客が訪れ、醸造所見学ツアーなどワイン文化に親しめる取り組みが盛んに行われています。それを創造的模倣として宇治茶畑にも生かす試みが行われており、単なる農地から観光資源へと変わっています。
 フィットネスクラブの「Curves(カーブス)」は、女性だけのフィットネスクラブ。年齢不問、1回わずか30分の健康体操教室というコンセプトは、「対象市場・顧客」から「提供する価値」、「商品・サービス」「提供方法」「流通チャネル」「時間・スピード」などすべての要素が、従来の男性の多いフィットネスクラブの常識を変えました。今や全国の店舗数は1800店以上、会員数は80万人という実績を上げています。
 また、商品名を変えるだけで成功した例もあります。ティッシュペーパーの『鼻セレブ』(旧:モイスチャーティッシュ)、清涼飲料水の『お〜い お茶』(旧:缶煎茶)、靴下の『通勤快足』(旧:フレッシュライフ)などが好例でしょう。
 他に、頑丈な構造にすることで持ち運びに気を遣わなくてもいい、出張に特化したノートパソコン、本機は無料にしてカウンター課金で消耗品費にしたコピー機、計算機という機能からぼけ防止の「考具」としても売れているそろばん等々。「変えたらシート」にある現在の状況を構成する要素を1つ変えるだけで、劇的に変化する場合があるのです。
 
 
商品名を変えるだけでも、劇的に変化する
 
 
5W3Hに置き換えて考えてみる
 
 「変えたらシート」に書き込む際、「現在の状況」を下の5W3Hに置き換えると考えやすいと思います。
 「儲かりそうか」と「できるか」から判断して小規模に始めてみましょう。そして①予想通り、②思いがけない成功、③思いがけない失敗の3つの視点から、市場のニーズをくみ取り、売れる仕組みになるまで、テストを繰り返します。やがて、売れるめどがついたら本格的に事業として取り組むというわけです。 
 このように「変えたらシート」を活用すれば、ゼロから商品開発・市場開拓するより、はるかに短期間・低コスト・低リスクで、商品開発も市場開拓もできます。現在の商品や事業を儲かるビジネス・モデルに変えることも難しくはないでしょう。
 
対象市場・顧客……………………Who
提供する価値………………………Why
商品・サービス……………………What
提供方法………………………………How
流通チャネル……………………Where
時間・スピード……………………When
数量…………………………How many
価格…………………………How much