【2017年11月号】できるビジネスマンにはこれも必要!もの忘れを防ぎ、記憶力をアップさせる方法
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神経内科の医師であり、テレビや多数の著書で知られる米山公啓医学博士にアドバイスしていただいた。
「あれなんだっけ」などと、いつも使っている言葉でありながらすぐに出てこないことや、いま言おうとしたことを一瞬にして忘れてしまったり、日常生活の中で記憶力の低下は気になるものです。
年齢と共に記憶力の低下が起きてきますが、それを防ぐ方法を考えてみましょう。
記憶には3つの種類
記憶には新しいことを覚えていく「記銘力」、覚えたことを脳に記録しておく「保持」、記憶したことを思い出す「想起」の3種類があります。
いわゆるど忘れは「想起」がうまくできない状態です。昨日のことをなかなか思い出せないのは「保持」が低下している状態。新しいことが苦手と思うのは「記銘力」の低下です。日常の生活ではこれらの記憶力が関係しあって、「もの忘れが多い」ということになります。
記銘力をアップする方法
新しいことを覚える力は、記憶の法則から言えば、好奇心です。自分の好きなことは努力しないで覚えられるものです。しかし、仕事に関係することはなかなか記憶できません。つまり本気で仕事に興味を持っているかどうかということになります。
なんども繰り返すことで次第に記憶は強固なものになっていきますが、それでは効率が悪いのです。
新しいことを覚える力は、やはり、いかにいろいろなことに興味を持てるかどうかということです。営業であれば、仕事をする相手にどれほど興味があるかということになります。重要な人であればあるほど名前も顔も覚えてしまうものです。
新しいグッズ、新しいレストランなど自分がいかに新しい情報を持っているか見直してみれば、自分の記銘力の強さがわかります。
「保持」をアップする方法
記憶の「保持」とは、いわゆる長期記憶と呼ばれ、一度覚えたら消えない記憶なのです。いまさっきの記憶は海馬で処理されて、大脳皮質へ送られる、忘れない記憶に変化していきます。そうなれば、忘れることはありません。つまり大脳皮質へ記憶をいかに上手に送り込むかということです。
「保持」で重要なことは十分な睡眠です。前日の情報の中で重要なものを睡眠中に、選んで大脳皮質へ送り込んでいるのです。だから十分な睡眠が取れないと記憶は保持されないで消えていってしまいます。
試験の前日、徹夜で勉強をして試験会場へ臨むのと、ある程度勉強して寝てしまう場合では、寝てしまったほうが覚えている記憶の量は多いのです。つまりうまく「保持」ができるのです。睡眠中は脳へ行く血液が増えて、脳が活性化していますし、神経細胞を刺激する神経栄養因子が増えるのです。
記憶と睡眠は非常に重要な関係を持っています。睡眠によって脳を休ませるのではなく、記憶力をアップするのだと考えるべきです。
保持をアップするもうひとつの方法は感情につなげることです。記憶は驚いた、感動したなどの感情が動かされたときに、一瞬にして忘れない記憶になります。
仕事の記憶で感情を動かすというのは難しいかもしれませんが、それくらい打ち込むことで、無理せず、忘れない記憶にしていくことができるはずです。仕事に感動をいかに持ち込めるかということでしょう。
「想起」をアップする方法
「想起」がうまくいかない状態とは、いわゆるど
忘れです。一度記憶して忘れない記憶になっていても、どうしてもうまく思い出せない、途中まで出かかっているのに出てこないという状態です。
記憶というのは、コンピューターのハードディスクにそのまま書き込んでいる状態とは違います。リンゴという単語であれば、赤い、丸い、あまい、くだものというようにさまざまな要素にわけて記憶されています。思い出すときには、いろいろな要素を取り出して「リンゴ」という言葉になります。つまり思い出す手順があります。それを間違ってしまうと、「赤いあれ」という感覚はあっても、リンゴという言葉が出てこなくなってしまうのです。あることを覚える場合、できるだけいろいろな手がかりがあったほうがいいということです。関連するいろいろなこと、覚えた場所なども思い出すときには重要になってきます。ひとつのことを覚えるのではなく、関連することも覚えていくと、思い出しやすいのです。
またど忘れの状態はもうひとつ原因があります。周辺の記憶に気持ちがいってしまい、重要な肝心の単語が出てこなくなってしまうのです。あまい、丸い、赤いということはしっかり覚えていても、リンゴという言葉を思い出すことを抑制してしまうのです。
そんな場合はむしろそこで諦めてしまいましょう。時間と場所を変えてもう一度考えるとすっと出てくるものです。
こういったど忘れを心配するのではなく、うまく思い出せないからいいやくらいに考えて、また思い
出せるだろうと前向きに考えることも大切です。
「ワーキングメモリー」というもうひとつの記憶装置
ワーキングメモリーは、時間の長さで区別する短期記憶でも長期記憶でもありません。ワーキングメモリーとは、何か目的を持って作業するときに使う記憶です。例えば暗算でお金の計算をする、人と話をする、創造性のある思考をする、あるいは同時に物事をやるときなどに必要になる記憶です。脳の中の黒板と考えるとわかりやすいです。
ワーキングメモリーの機能がしっかりしていると、幅広く、創造性のある思考ができます。ワーキングメモリーの機能が低下していると、いわゆる頭のキレが悪くなったと思うようになります。ワーキングメモリーは脳の前頭葉にあるとされ、年齢とともに面積が狭くなってきます。
だから、脳のキレが悪くなったと思うときは、ワーキングメモリーを鍛えていく必要があります。ワーキングメモリーを鍛える方法にはいろいろあります。
⑴新聞の短い記事を読んで、内容を理解するので はなく、印象に残った単語を4つ挙げてみる。
⑵電車の中吊り広告を見て、視線をそらしたあ と、そこに書かれている文章の単語を思い出し てみる。
⑶人と話をするとき、やたらに自分の意見を言わ ないで、相手の話を記憶するように聞いてみる。
⑷カラオケで新曲を覚えて、歌詞を見ないで歌え るようにする。
⑸文章を読んだり、音楽を聴いたりするときにも、 頭の中でイメージを作るようにする。
記憶の原則として、いやだなとか苦手だなと思うと、記憶していくことが難しくなります。まずは苦手意識を持たず、楽しく記憶していく必要があります。
またストレスが多いと、脳をしっかり働かせることができずに間違いも増えます。記憶力をアップするには、ストレス回避を心がけることです。つまり脳の中に余裕を持たせることです。さらに覚えるときには「覚えられる」と宣言をすることです。口に出して言うだけでも記憶力が違ってきたりするのです。
逆に忘れてもまた覚えればいいというくらいの楽観的な考え方や、自分の苦手なことが覚えられないと悲観的にならないことです。
脳の基本は忘れるようにできています。だから何もしなければ多くを忘れていくのが普通です。好奇心を持ち、楽しく記憶するその姿勢が非常に重要なのです。