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【2015年4月号】 部下がやる気を出す! 魔法の言葉 part2 【しかり方編】

ニュース

部下のやる気は、上司のちょっとした言葉に左右されるものです。
特に「叱り方」は上司のリーダーとしての資質さえ問われることも。
どんな叱り方をすれば、前向きに行動できるようになるのでしょうか。
人材育成コンサルタントの吉田幸弘氏にうかがいました。

 

まずは最初の声の掛け方が大切「クッションフレーズ」を使おう

Part1でも触れましたが、叱る前にはイライラしないよう自分の心の感情をコントロールしようと意識しましょう。それには、部下の長所を思い浮かべたり、過去のいい成績を思い出したりすると、感情的になるのを抑えるのに役立ちます。また、感情的になりやすい時間帯は避けるようにしましょう。例えば昼前はお腹が空いて怒りやすくなるとか、上司はそういう自分のクセや傾向も考慮しておくことです。
 そうして部下に声を掛けるわけですが、「ちょっと、いいか」とか「話があるんだ」とかは唐突過ぎて、「ちょっとってなんだろう?」「話ってなんだ?」と部下は緊張し、妄想的にいろんなことを拡大解釈して強いストレスを感じます。そこで「クッションフレーズ」という部下にも心の準備ができる言い方を使ってみましょう。例えば、
 「ちょっと嫌なことを話すけどいいかな?」
 「話しにくいことなんだけど、聞いてくれる?」
 これだと部下も「あまりいい話ではないな」と心の準備ができます。敏感な部下なら上司も言いにくいんだなと、上司の気配りを感じてくれることでしょう。

 

「クッションフレーズ」で叱る点をはっきりと告げる

 「クッションフレーズ」は、叱る点を明確にするとさらに効果的です。例えば「この前のミスで、あそこを直せば良くなることに気付いたんだけれどいいかな?」。こう言われれば部下も前向きに訊こうと思うはずです。
 また、以前と同じようなミスをして、前にも叱ったかもしれない場合、つい「たしか、この前も言ったよな!」と言ってしまいがちですがこれはNGです。もし実際は伝えていなかったとしたら部下は今初めて訊くことになり、「なんだこの上司は。自分が誰に話したかということも覚えていないのか」と上司としての資質を疑うのはもちろん、モチベーションも下がります。こんな場合は「私の記憶違いかもしれないけれど」とか「私の伝え方がうまくいかなかったかもしれないから、もう一度言うね」がいいでしょう。
 「前から気になっていたんだけど」もNGです。気になったという時間はなるべく短いほうがよく、「ふと思ったんだけど」「今、思った事だけれど」と言いたいですね。気になった時間が長いと「なんで今まで指摘しなかったのだろう?」と変に拡大解釈してしまい、不安感を増長させてしまいます。すると「早く終わんないかな」「嫌だな」となり、その感情が態度に出てしまいます。それを見て取った上司は「お前、人の話を訊いていないだろ!」と、ついに怒ってしまうことになりかねません。

 

褒め言葉を挟む叱り方褒める+叱る+褒める
 叱ることの目的は、次のアクションにやる気を出して取り組んでもらうことです。指摘して終わりではありません。
 例えば、営業成績はいいのに、書類に間違いがよくあるとか、提出が遅いとか、多部署からのクレームが頻繁にあるという部下は、叱っても内心は「売上をあげているのになんで叱られるんだ?」と思うものです。そこで効果的なのが、叱る事案の前後に「褒め言葉」を挟む叱り方です。
×【良くない例】
上司「小林君。君ね、書類を出すのがいつも遅いんだよ」(いきなり叱る)
小林「すみません(成績がいい分、帰りが遅くなるから仕方ないだろ)」(納得していない)
上司「きちんと守れよ。いくら成績がよくたってこんなことじゃチーフになれないよ」
小林「わかりました」(急速にやる気がしぼむ)
 叱って終わるよりは、褒める言葉や期待する言い回しで締めくくるほうが、部下のモチベーションも上がるはずです。
 【おすすめ例】
上司「小林君、今月も順調に売上をあげているね」(まず褒める)
小林「ありがとうございます」
上司「ところで、1つ気になる点があるんだ。書類の提出が遅れ気味なんできちんと守ってほしいんだよ」(改善すべきところを指摘)
小林「あっ、すみません」(素直に謝罪)
上司「ここのところずっと成績が良くて、昇格も見えてきているんだからもったいないよ。君には期待しているんだから、引き続きがんばって」(未来への期待感でモチベーションを上げる)
小林「はい、わかりました。申し訳ありませんでした」(さらなるやる気が出てくると共に深く反省)
 せっかく褒めてもらっているのに、上司に悪いことをしてしまったと反省すれば、その部下は一段とがんばって成績をあげることでしょう。
 さらに、その部下が優秀だったり、社内のトップセールスマンだった場合は、褒めるよりも「いつも助かっているよ」とか、「ねぎらいの言葉」がいいですね。

 

反発する部下にはオウム返しで
 先ほどの営業成績がいいのに叱られたりすると、「どうしてですか」「そんなのできないですよ」と反発される場合も想定しておきましょう。
 そんな時、つい「ちょっと黙って!」とか「なんか文句あるのか!」とか「口答えするな!」と怒鳴ってしまいがちです。もちろんこれはNG。そんな言葉を発したら上司自身の感情が突っ走ってしまいます。怒鳴った自分の声が意外と大きくて、怒鳴った自分が驚いて興奮してしまうからです。そんな場合、「納得できないようだね。君の意見を訊かせてくれないか」が無難でしょう。
 また、「〜と君は思うんだね」「〜と君は考えているんだね」というようなオウム返しも、部下は自分の意見を訊いてくれた、わかってくれたんだと満足し、そして「たしかにそうかもしれないけれど、私はこう思うんだ」と言えば、反発心を和らげて上司の言葉を訊くはずです。
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叱っても変わらないのは、やり方がわからないことが多い

 叱っても叱っても変わらない部下がいます。「この前も言ったじゃないか」はNGです。結局変わらないのは得てしてやり方がわからないことが多いようです。
 こんな時に、よく「自分で考えろ」と言ったりしそうですが、これは上司の勝手な言い草です。上司にすれば、自分で考えて答えを見つけたほうが早く成長すると思うでしょう。けれど、自分で考えてできるのなら、叱られることもなく、とっくにいい結果を出しているはずですから。
 そんな時は、「具体的に何をやったらいいと思う?」と質問してみましょう。これで何か方策があるのかないのかがわかります。部下に方策が無ければ、具体的なアドバイスや指示をすればいいのです。
 また、例えば提案書を持ってきたとします。前回と何も変わっていなかったり、前回と同じところが間違っていたとしても、どこか前回と違う点はないか、良くなっているところはないかを探しましょう。
 同じミスを繰り返すのなら解決策を「一緒に考えよう」と言えば、部下は安心します。どの段階でミスが起きたのか、時系列でたどったり、チャート図にしてみたり。指示待ちタイプの部下なら、2〜3の改善案を提示して、どれを選ぶかを考えさせるのです。

 

落ち込みやすい部下への叱り方

 最近の若者、ゆとり世代と呼ばれる若者たちの特徴として「打たれ弱い」とよく耳にします。そんなにきつく叱ったつもりはなくとも、酷く落ち込んでしまうのです。そういう落ち込みやすいタイプへの叱り方は前回も取り上げましたが、セミナーでも本当によく相談を受けます。
 まず「叱る時は、1つのことだけにする」ことです。誰でもそうですが、2つも3つも言われると、どうしたらいいのか混乱してしまいます。1つだけならその事に集中して取り組めるので、早く改善できることでしょう。
 次は前回もお話した「アメとムシ(無視)」です。「昨日の報告書だけど、累計数だけ直しておいて。随分良くなったよ」と褒めてアメを与え、小さなミスや一過性のミスはスルーします。あまり重要でない細かいミスばかりに目を向けていると、部下も何度も叱られるのは嫌なので、無難なことしかしなくなります。重要なことだけ叱るようにしたいものです。
 さらに「叱る基準を明確に」しておきましょう。打たれ弱い人は叱られることにいつも怯えています。どのようなことをしたら叱られるかをはっきりさせておくのです。少々のミスはスルーするけれど、それを隠すと叱るというようにです。

 

繰り返すミスにはアメとムシ(無視)

 誰もが経験していると思いますが、ミスを繰り返してしまう場合があります。そういう時は、常にミスを犯しているのではないだろうかと不安が心を支配してしまいます。気持ちはそこばかりに向いてしまって、本来の仕事に集中できません。そんな時は「そこは俺が見るから」と手離れさせてあげましょう。
 また、ミスを繰り返して萎縮していると、また同じところでミスをしてしまうもの。「また間違っているだろ!」と怒鳴るとさらに落ち込んで、またミスをしてしまい、どんどんぬかるみにはまってしまいます。ミスは同じ事案で繰り返すことが多いですから、その悪循環を断ち切るためにも時には「ここは直しておいたから」とか「この部分はB君に回したから」とアメを与え、小さいミスはムシ(無視)をする。まさにアメとムシです。
 そうすると甘やかして成長しないのではと思われそうですが、やがて責任ある立場になった時には自覚するようになります。長い目で育成することが肝心。欠点を打ち消すことで長所まで一緒に打ち消さないことです。

 

叱り過ぎてしまった場合

 打たれ弱い部下を叱った後、うなだれている姿を見て「さっきはすまなかった」などとは決して言ってはいけません。相手の反応からちょっと叱り過ぎたかなと感じても、謝ってしまうと叱った内容を否定してしまうことになります。部下も「なんだ。それほど深刻に受け止める必要はなかったのか」と勝手に解釈をしてしまいます。
 叱り過ぎたかなと感じた場合、「少し感情的になり過ぎたけれど」「言葉が足りなかったかもしれないね。納得できない部分があったかな?」と言うのはOKです。叱ったことを取り消すのではなく、感情的になったことを詫びるのは構いません。
 ただ、叱った後に気をそらすために家族や趣味の話をするのは無理矢理感がありますし、「一杯呑みに行こうか」も、いかがなものでしょうか。部下はしばらく上司と距離を置きたいでしょうし、呑み屋の席でまた叱られるのではないかと、ただストレスに感じるだけです。
 この場合、叱られて落ち込む部下の気持ちを楽にしてあげるコツとして私の経験では、叱った後はまったく別の仕事の話をするのです。「ところで、今度の展示会の打ち合わせだけど、いつにする?」とか、「そういえばB社への納品だけど手配は済んでいる?」とか。叱った話の仕事とは関係のない、まったく違う仕事の話をされると「まだ自分は必要とされている」「次はミスをしないようがんばろう」と思うものなのです。
 これらの言葉や言い方は部下だけでなく、同僚やクライアント、家族にも使えます。相手が気持ち良くなる言葉でコミュニケーションがうまくいけば、成果や信頼関係となっていいものがたくさん生まれてくるはず。まずは実践してみてください。