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【2019年7・8月号】部下のやる気を高める!モチベーション・エンパワー Part1

ニュース

人は何のために働くのか。と、改めて問われてすぐに答えられるだろうか。部下や従業員がどうもやる気が見られず、職場に活気がない場合、“何のために働くのか”という根源的な「モチベーション」を見つめ直すことが大切とJTBコミュニケーションデザインの野本明日香氏は指摘する。今、リーダーのスキルの一つとして注目されている「モチベーション・エンパワメント」についてうかがってきた。 
※本稿では「エンパワメント」を従業員の本来の力を引き出し、成果と従業員の充実感を生み出すという意味とする


 
人が行動を起こす前にある、モチベーション
 
「モチベーション」とは、人が行動を起こすときの原因、つまり動機づけのことですが、
ラテン語の「movere(動く)」が語源となっています。
私たちが行動を起こす前には、必ずモチベーションの存在があります。
食事をする、友人と会っておしゃべりをする、電車に乗って仕事に行く、
その全ての行動に必ずモチベーションがあるからそのように動くのです。
組織の活性化やチームをマネジメントするトップやリーダーにとって、「人は何で動くのか」、
すなわち「人のモチベーション」を知ることは必須条件といえます。
部下に素晴らしいパフォーマンスをしてもらうには、
トップやリーダーのモチベーションをマネジメントするスキルが欠かせません。
 
 
トップやリーダーは自分自身のモチベーションを見直す
 
「モチベーション・エンパワメント」は、まずはトップやリーダーが自分自身のモチベーションを見直さなければなりません。
例えば一流のアスリートたちはここぞという場面で高いパフォーマンスを出すために、
メンタルもフィジカルもコントロールするスキルを持っているもの。それと同じなのです。
しかもモチベーションは伝播します。モチベーションの高いリーダーの側にいれば、
部下のモチベーションも高まりやすくなります。
だからこそ自分のモチベーションをコントロールし、
常にいいモチベーションを維持することはトップやリーダーの大前提といえるでしょう。
大企業や有名企業といわれる組織の管理職者であっても、パフォーマンスをうまく発揮できていない人はよくいます。
保身に走ってしまったりするモチベーションの低さが要因の一つで、その人の部下にも悪影響を与えてしまいます。
 
 
モチベーションを高めるスキル その1
「身体の状態」を整えること
 
気分が塞ぎ込んだら筋トレを!?
 
自分でモチベーションをコントロールし、高める5つの要因とスキルについてお話しましょう。
まず、モチベーションは体の中で生まれますので「身体の状態」を整えることが大切です。
筋肉を動かすとモチベーションを高める物質がたくさん出るという研究結果があります。
例えば快感物質でもある「ドーパミン」はやる気を高めて集中力を上げます。
この物質は何かを達成したとき等にも出ますが、筋肉を動かしても出るのです。
ネガティブなときは失敗が続いたりします。
そのマイナスのサイクルを断ち切るためには、メンタル面で改善を図るよりもフィジカルな状態を整えるほうが手っ取り早いのです。
つまり、どん詰まりを感じたら筋トレをしてみましょう。
ウォーキング、ストレッチ、ヨガ、有酸素運動等もお勧めです。適度な運動はモチベーションを高める効果があります。

 
 
モチベーションを高めるスキル その2
「アウトカム」を持つこと
 
今日も一杯のビールのために!
 
モチベーションを高めるには「アウトカム」を持つのもポイントです。
「アウトカム」とはゴールや目標、欲しいモノのこと。
「私の理想の状態はこれだ」「これを手に入れたい」というイメージを明確に持つと、
そのイメージに向かって体の神経、細胞の一つひとつが動いていくといわれています。
「あの資格が取りたい」「ハワイに別荘を持ちたい」「今日一日しっかり働いて、
美味しいビールが飲みたい」というのもアウトカムなのです。
自分にとって魅力的なアウトカムがきちんと描けていると、そこに向かってモチベーションがどんどん上がっていきます。
そこでお勧めしたいのが、「どうなれば理想的だろうか」、「どういうのが素敵だろうか」
というアウトカムを語る場を持ってみることです。
例えばフラストレーションの溜まる会議について、どんな会議なら素敵なのか?活気のある有意義な会議とは?
明日の会議は楽しみで仕方がないと思える会議とは?を皆で話し合ってみます。
理想とする会議のアウトカムが見えてくれば、自然とそのアウトカムに向かって皆が取り組むようになるものです。
現状とアウトカムの間にはギャップ、つまり問題や課題があります。
そのギャップが何なのかを明確にすれば、それを解決するための行動も明確になるというわけです。
 
 
モチベーションを高めるスキル その3
「ミッション」を定めること
 
自分は人を笑顔にする花屋なんだ!?
 
私たちの働くモチベーションの最も核にあるのが「ミッション」です。
私たちの仕事は、誰かの幸せに繋がっており、誰かの役に立っているからこそ、その対価としてお金をもらっているといえます。
自分が提供したい価値は何なのか、自分は何者でありたいのか、それが「ミッション」となります。
例えば「自分は人を笑顔にする花屋でありたい」とか「自分は斬新な味で人を楽しませる料理人でありたい」とか。
どんな仕事を通じて人を幸せにする使命があるのか、
すなわち自身の命をつかって果たすべき役割が何なのかを考えてみましょう。
それは今の仕事に魅かれた理由にヒントがあるかもしれません。
従業員一人ひとりのミッションと会社のミッションが繋がっていると理想的です。
企業のミッションは、企業理念やビジョンに表れていることが多いでしょう。
自分たちの組織は何をする組織なのか。そして従業員は、何のために、誰のためにこの仕事をするのかがミッションになります。
自分は何者であり、何を実現したいのかが定まり、人生を賭して果たしたい役割が明確になると、行動に迷いがなくなります。
そして、何かの判断を迫られたとき、優先順位が明確になり、瞬時に判断できるようになります。
つまり、ミッションは全てのよりどころとなるわけです。

 
 
モチベーションを高めるスキル その4
「柔軟性」を身につける
 
クレームではない。チャンスなんだ!
 
モチベーションの高め方で「柔軟性」は身につけておきたいスキルです。
モチベーションが下がっているとき、今、起きている出来事が要因だと思いがちですが、下げているのは自分自身。
同じ出来事に対する反応は人それぞれです。その反応は自身が無意識に選択しているのです。
目の前の出来事にどういう意味づけをするのか、その事実をいかに生かすか、それが「柔軟性」です。
お得意様からクレームがあったとしましょう。
「もううんざりだ。この仕事は辞めよう」と思うか、「上司がフォローしてくれなかったからだ」と思うか、
それとも「このクレームには何か意味がある。何か学べるはずだ」と思うか。目の前の事実は変わりません。
どのように受け止めるかは自分次第です。
うまくいかないとき、モノの見方を変える「リフレーミング」が役立ちます。
私たちはモノごとを見て、一般常識や決まり事、特定の価値観や思い込みなどのフレーム(枠組み)で意味づけをしています。
リフレーミングはそのフレームを柔軟に付け替えてみることをいいます。
フレーミングの技をいくつか紹介しましょう。
人間関係がうまくいかないときなど、自分以外の誰かの目線で見る方法です。
意見が食い違うのならその相手の靴を履いて、相手の目玉を借りたら自分がどう見えるかを考えます。
目線の高さを変えるのもいい方法です。ロケットに乗ったつもりで物事を俯瞰してみます。
自分たちの仕事が何の役に立っているのか、顧客の先に誰がいるのか。地球レベルで物事を見るのもいいですね。
社内で部門同士が対立しているのなら、事業部全体、会社全体へと俯瞰してみましょう。
時間軸を変える方法も役立ちます。今の仕事は、半年後は、1年後は、そして10年後、30年後はどうなっているのか。
周囲の環境にしなやかに適応するリフレーミングを使った「柔軟性」を身につけ、起こる出来事は全てチャンスと捉えられれば、こんな素敵なことはありません。

 
 
モチベーションを高めるスキル その5
「刺激」でマンネリ化を防ぐ
 
人、場所、習慣を変えてみよう
 
人の脳は同じ景色ばかりを見ていたら、何も感じなくなったり、以前は刺激的だったモノでもやがて飽きてきて、
何も気づかなくなったりします。マンネリ化はエネルギーを削いでしまうもの。
そこで必要となるのが、変化による「刺激」です。
何か変化が起こるとそこに化学反応が生じますから、「刺激」はモチベーションを高めるのに重要な要素といえます。
変化をつけるには、例えば人との出会いがあります。
趣味の場や異業種交流会に出かけて、ふだんは会わない人との出会いは、いい刺激になってモチベーションを高めます。
また、仕事のメンバーを替えるのもいいでしょう。
別の事業部の人と仕事をすれば、異なる考え方や仕事の進め方が刺激となり、柔軟性を高めることにも繋がります。
「場所」を替えるのもお勧めです。許されるのなら、カフェや図書館で仕事をしたり、
席替えや模様替えを定期的にすれば座っているときの視界が変わるので刺激になります。
また、通勤の経路を変えたり、日常で使う文房具類を替えたり、日々の習慣を変えるのもいいでしょう。
さらに「刺激」を得る方法としては、エネルギーのあるモノに触れることです。
テンションが上がる音楽や映画、漫画に小説、食べ物やアートでもいいでしょう。
自分が元気になるモノ、演劇やコンサートなど、全力でエネルギーを放出されているモノに触れることは、
大きな刺激となるはずです。
このように、「身体の状態」「アウトカム」「ミッション」「柔軟性」「刺激」とモチベーションを高める5つの要素とスキルを紹介してきました。次回はこの5つの要素をさまざまなビジネス現場で生かす方法を見ていきましょう。
 
 
参考:野本明日香著『たった5つでモチベがあがる技術』(日経BP社)