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【2019年1・2月号】リーダーの資質を身につける あなたは 一流のリーダーか? Part1

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どんな仕事や立場にも、いわゆる一流といわれている人はいる。ならば二流や三流もいることになる。それぞれどんな特徴があって、行動をとるのだろうか。リーダー教育で数多くの実績を持つ経営コンサルタントの吉田幸弘氏に、一流、二流、三流のリーダーについてうかがってきた。


 
★一流のリーダーの「スタンス」は?
 
 
■部下に対する考え方
 
― 三流のリーダー
ほとんど褒めずに、叱ってばかりいるリーダーがいます。そんなリーダーの部下は「提案や意見を言っても、どうせ受け入れてもらえない」と考え、言われたことしかしない人になってしまい、部下は育ちません。
 
― 二流のリーダー
部下が仕事を楽しめるように仕向ける人はリーダーとしてのいい資質を持っているでしょう。仕事が楽しくなればどんどん自発的になります。優れたリーダーは、部下に成功体験を味わってもらったり、仕事のアイデアを出し合う会議を開いたりといった工夫を考えるのです。
 
― 一流のリーダー
先の二流でも素晴らしいリーダーなのですが、一流はもっと先のことを考えます。「部下の成長を重視する」ことです。部下の力が80だとすると、130の仕事は辛いので110ぐらいの少し負荷をかけた仕事を与え、挑戦意欲をかき立てるのです。部下に少し上の仕事をさせるのが一流のリーダーといえます。
 
 
■理想のリーダー像とは?
 
― 三流のリーダー
威厳があるのが理想のリーダーだと思っている人です。部下になめられてはいけないと、威圧感を出してもリーダーとしての力不足は部下にすぐに見破られてしまいます。
 
― 二流のリーダー
指示をどんどん出して、「俺についてこい」という統率力のあるリーダー。威張らなければ、それはそれでいいでしょう。でも、部下は自ら考えて能動的に動くことが大切なので、このリーダーのもとでは部下は、リーダーの力量以上の力を出すことはできないでしょう。
 
― 一流のリーダー
共感を呼ぶリーダーは一流です。例えば落ち込んだ部下には「大変だったよな」と部下の気持ちに寄り添い、時には自分の失敗談を話します。人は成功談よりも失敗談のほうに共感するものです。そんなリーダーなら相談もしやすいはず。そして「つべこべ言わずにやれ」などと理不尽な言い方はせず、その仕事をする理由を明確に説明できるリーダーは一流です。
 
 
 
★一流のリーダーの「仕事の進め方」は?
 
 
■苦手な仕事や新しい仕事の場合
 
― 三流のリーダー
苦手な仕事を我慢して取り組むようなリーダーではいけません。我慢し続けるとただ苦痛になるだけですから。
 
― 二流のリーダー
できるリーダーは、得意な仕事と組み合わせながら進めていきます。例えば、30分苦手な事務処理をしたら、お得意様に電話してみたり、メールをチェックしてみたりという具合に苦手と得意を組み合わせます。また、新しい仕事を一つの「かたまり」と思いがちなので、仕事を細かい作業に分割してみると、気持ちが楽になることもあります。
 
― 一流のリーダー
一流のリーダーは楽をする人です。どういうことかと言いますと、上司や先輩をはじめ、時には部下が持つ知識や情報を借りて利用します。つまり「集合知」を上手に使うのです。例えば経営会議に提出する報告書なら、上司にどのように作っているのかを見せてもらいます。いちいちフォーマットを作成する時間はもったいなく、それは単なる作業。生産性はありません。作業に時間をかけず、価値を生むことに注力するのが一流のリーダーです。
 
 
■「目標設定」の立て方
 
― 三流のリーダー
「わが事業部の今期の目標は前年1割アップの1億円! 必ず達成しよう!」と数字の目標だけを掲げ、結果のみ、経過を見ないリーダーがいます。これでは部下もやる気は出てきませんし、やみくもに売上を追いかけても結果は出ないでしょう。
 
― 二流のリーダー
達成するための「途中経過」はとても大切です。できるリーダーは各プロセスの目標を設定します。四半期2500万円を達成するために既存客からは1000万円ずつ増やし、新規を5件獲得する、というような設定です。ただ、もし途中の目標が達成できなかったとき、その要因を分析して解決策を指示できないのならまだ二流と言わざるをえません。
 
― 一流のリーダー
一流のリーダーなら、達成できない要因を分析し、次は達成できるように行動も細かく設定します。「見込み客を100件ピックアップして電話でアポイントを申し込む」「既存客300件に新商品を案内するDMを送る」「企画書を30件書く」とか。電話や書くことはきちんと取り組めば確実にできることです。そうした細かな設定は、たとえ小さなことでもやり遂げれば、部下は成功体験を味わうことができます。
また、プロセスを分解してみましょう。どこがいけなかったのか。何につまずいたのか。アポイントが取れて面談できても見積りが出せないとか。見積りが出せても契約に至らないとか。それならクロージングを強めるためにベテランと二人で訪問させるといった対策が立てられます。そしてたまたま新規が獲得できた。達成できた。というのもそのままにしておくのではなく、貴重な成功体験としてその要因や経過は分析しておきます。
 
 
 
★一流のリーダーの「部下育成」は?
 
 
■部下の仕事に対しては?
 
― 三流のリーダー
知識も経験もない別部門に配属された新リーダーを想定してみましょう。よくあるのが今さら最初から仕事を学ぶより、これまでの管理経験を活かして効率的にやっていこうという方法です。その場合、自分より知識がある部下に仕事の内容を聞こうとしない、部下がどんな仕事をしているのか知ろうとしない人がよくいます。それでは部下との信頼関係は築けませんし、新しいチームで成果を上げる仕組みも作ることはできません。
 
― 二流のリーダー
新しい部門で、積極的に部下に質問し、部下の仕事内容を理解することはリーダーとしては当然です。中には知識もスキルも部下に負けないように頑張るリーダーがいますが、それはリーダーのすることではありません。競い合えば、リーダーはプレイヤーになってしまい、本来の仕事であるマネジメントができなくなるからです。
 
― 一流のリーダー
リーダーの仕事は、部下に負けないように頑張るのではなく、サポートにまわって部下ができることはどんどん任せてしまうことです。そうすれば部下へのリスペクトにもなり、信頼関係も築きやすくなります。そして、部下が担当する仕事はどこにつながるのか、誰の役に立つのかをきちんと把握し、部下よりも一歩高い視点で俯瞰的に業務の全体像をつかむ。これが一流のリーダーの仕事です。
 
 
■部下の戦力化について
 
― 三流のリーダー
部下が早く戦力となるよう、ひっきりなしに指示を出す人がいます。いつの間にか雑用まで与えてしまい、自分の手足のように使ってしまっています。これでは部下のモチベーションは上がりません。
 
― 二流のリーダー
部下はアシスタントではありません。フラットな関係の「パートナー」と位置付ければ、モチベーションも上がり、部下は建設的な意見を出しやすくなって、積極的に行動をとるはずです。そうなれば結果も出せて業績も上がることでしょう。しかし、これでもリーダーの役割を果たしているとはまだ言えないのです。
 
― 一流のリーダー
リーダーは部下を成長させなければなりません。それは上から指導する教育と少し違って、サポート役にまわるのがリーダーであり、主役は部下なのです。何が得意で何が苦手かを知り、強みを見つけて活かせるようにサポートする。つまり、一流のリーダーは、部下を「タレント」と考え、自分は「プロデューサー」になるような人だといえます。
 

 
★一流のリーダーの「チームづくり」とは?
 
 
■権限移譲はこうする
 
― 三流のリーダー
「部下が指示待ち人間になって困る」と悩むリーダーは多いようです。でもこれはリーダーの責任ともいえ、指示を細かく出しすぎなのかもしれません。「メールを送る前に下書きを見せて」「12時前には送るように」「15時になってもメールの返信がなければ電話して」など。とどめは、指示以外のことをやった場合、「指示したことだけをやりなさい」と言う。これは完全にアウト。部下は言われたことだけしかやらなくなります。
 
― 二流のリーダー
「この部分は君がやって」と自由にできる余地を与えましょう。ただ、自由だからと適当にやる部下もいます。さて、一流のリーダーならどうするでしょうか。
 
― 一流のリーダー
自由とともに「責任」も与えます。ただし全ての責任を負わせるのではありません。責任には、「遂行責任」「報告責任」「結果責任」の3つがあります。部下には「遂行責任」と「報告責任」を与えるのです。これなら途中で投げ出すことも少なく、やり切ることでしょう。「結果責任」はリーダーが負います。そうすれば部下は、きちんと報告し、最後まで遂行すれば、たとえうまくいかなくてもリーダーが責任をとってくれるから安心して取り組めるというものです。
 
 
■チームでの仕事の配分について
 
― 三流のリーダー
仕事ができる部下には、いくつもの仕事が集中し、忙しくなります。そんな部下は、誰よりも早く出社し、夜も遅くまで頑張っているものです。リーダーも少し気にしつつも、よくできるのでついまた仕事を任せてしまう。すると、ある日突然、辞表を出してきた……。私の苦い経験のひとつです。
 
― 二流のリーダー
自分はこんなに頑張っているのに給料は上がらないし、他の人と同じなんておかしい。当然、そう思うでしょう。やはり、仕事の配分は平等にすべきなのです。
 
― 一流のリーダー
平等にしても、例えばよくできる営業マンなら、顧客を増やし、業績も上げるので、事務処理などの仕事も増えて忙しくなるもの。そんな場合、仕事を減らしたり、やめることを検討しましょう。例えば「記入項目がやたらと多い日報」「定期的に作成しているがほとんど誰も見ないデータ」等です。また急ぎの依頼の中にもそんなに急がないでいいものもあるはず。そこで一流のリーダーなら次のように考えます。
・この仕事をやらない場合の不利益は何か
・頻度を減らすことはできないだろうか
・既存の何かでカバーできないだろうか
・アウトソーシングできないだろうか
仕事を減らし、もっと楽で効果のある仕組みをつくる人こそ一流と呼ばれるにふさわしいリーダーなのです。
 
 
※参考:吉田幸弘著『リーダーの一流、二流、三流』(明日香出版社)