【2016年3月号】 できるビジネスマンはここが違う!「すぐできる」脳にする10の習慣
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そこで今回はどういう言い方をすれば、
部下は気持ち良く行動できるように変わるのでしょうか。
人材育成コンサルタントの吉田幸弘氏にうかがいました。
事務女性に「お茶出し」を頼むとき
来客時に事務女性にお茶を頼むことは日常茶飯事のことと思います。
「小林さん、A会議室のお客さんにお茶を出しておいて」なんて言ってないでしょうか。こう言うのは部下を駒のように思っているのかもしれません。上司と部下は上下関係ではなく、役割が違うだけ。そこを勘違いしていると、部下はそのうち、やる気がなくなり、最低限の仕事をこなしていればいいやと、質の低い仕事しかしなくなります。「私だって忙しいのに……」なのです。
「お茶出し」は雑務ではありません。大事な商談なら、好印象を与える大切な機会にもなり、今でもそうした対応にうるさい人はいるものです。
「小林さん。大切な商談なので、小林さんにお願いしたいんだ」
「小林さん。いつもありがとう。前回の対応が良かったと先方がおっしゃっていたから、小林さんなら安心だ」
「小林さんだから頼みたいんだ」というのがポイント。そしてお茶出し一つにしてもねぎらいの言葉があれば、本人もやる気を出すこと請け合いです。
ただここで注意してほしいのは、小林さんばかりに偏らないようにしましょう。私は頼んだ仕事だけでなく、食事や飲み会など、部下ごとの回数を記録しておきました。「なぜ、小林さんばかり」といったジェラシーはチームワークにはよくありません。
急ぎの仕事を頼むとき
急な仕事が入ってきてどうしても部下に頼まなくてはならないこともよくあるでしょう。
「急ぎの仕事なんだけれど、頼んだぞ」という命令口調的な言い方だと、「なぜ私なんだ?」「空いている人なら誰でもいいのか?」「この仕事を急いでやることにどんな意味があるのだ?」と反発するかもしれません。
まず模範例を示すとしたら、
「急ぎの仕事が入ってきたんだけれど、時間がないので一緒にやってもらえないかな」
「一緒にやってほしい」と頼まれると「丸投げ感」「やらされ感」は出ません。逆に上司を「助けている感」が出て、躊躇することなく動いてくれるのではないでしょうか。
急ぎの理由を明確に伝えるのも大切です。優先してやるにはそれ相当の理由がないと人は動きません。「もし決まれば大きな取引となり、その決定会議が来週にせまっているから」というのであれば、部下も優先して動いてくれるでしょう。「なる早」ではダメです。
さらにここで重要なのはなぜその人に頼むのか、という理由です。「いいから手伝ってくれ」では、私でなくてもいいのでは? と積極的にはなれません。「君は正確だから」「君の発想力が頼りなんだ」と、相手の自尊心をくすぐるのがポイントです。
プロジェクトを特命したいとき
特定の部下にプロジェクトを任せたいときは、前述の理由のように、なぜ君に任せたいのかを明確に伝える必要があります。
ただ、プロジェクトとなると仕事としては大きいので、単に自尊心を満たすだけではなく、いろんなアレンジが必要です。いくつかのタイプにわけて考えてみましょう。
■キャリアップ志向の部下
昇進・昇級を重視するタイプなら、「ポジションが上がる可能性もあり、他の人には任せられない」と言えば、俄然やる気が出てくるはず。
また、チャレンジ精神旺盛な部下なら「業界初」「難関」といった刺激的な言葉を選んで、まだ誰もやったことのない感を投げかけると元気に取り組んでくれるでしょう。
■リスク回避志向の部下
安定を求め、リスクを避け、失敗するのは嫌だという部下。このタイプはプロジェクトを受けた後のリスクを考えますので、リスクが小さいことの安心材料を提示してあげましょう。「関連部署への根回しはしてあるから」「以前経験したメンバーにも入ってもらうよう声を掛けてあるから」とか。
そして、「何かあっても私も責任を負うから」と、部下だけが責任を負うのではないことを伝えて安心感を与えるのです。
■自由志向の部下
束縛を嫌う部下もいると思います。そういうタイプの場合、自分の裁量でできるかどうかでやる気が変わってきます。ですから、本人が思うように仕事を進められるようにしてあげることがポイントです。ただし、自由にさせてとんでもない方向に行かないよう「これとこのポイントは押さえてくれたら、あとは君の自由な発想でやってほしい」と言えば、張り切ってやってくれることでしょう。
成績の悪い部下を変える言葉
ここまではさまざまな仕事を任せる時のケースを見てきました。次は仕事を任せた後を見てみましょう。
まずは成績がよくないケースです。
「やる気あんのか?」「いつになったらよくなるんだ?」はNGです。成績がふるわない時はつい注意してしまいがち。部下も上司に近づきたくありません。成績が悪いときは報連相も途絶えがちなので、部下が相談しやすい雰囲気をつくることが必要です。
部下と相対したとき、まずは少しでもいいところを探す。つまりなんでもいいので褒めます。
「君はいつも期日どおりに報告書を出すよね」
「君の提案書はわかりやすくていいよ」
「この前、同行したときのことだけど、導入部分は丁寧で良かったよ。後はクロージングだね」
実はいい部分を探すのって結構大変です。私が指導する研修やセミナーで、部下の欠点をあげてもらうとスラスラ出てくるのですが、長所はというと、なかなか出てきません。部下のことをよく観察して、知ることが大切です。
そして、前回のことは言わないようにしましょう。成績の悪いのを指摘したりすると、つい前回のことを持ち出して言ってしまいがち。「あのときもそうだった」「この前と同じミスじゃないか。この前は……」と。
成績が上がらないのは原因があるからで、それを追求することです。「何故」ではなく、「何が」のほうがいいでしょう。「何故」になると自分に原因があると考えてしまい、「何が」だと事柄を追求していくことになるので客観的に原因をつかめます。
上司「お疲れ様。小林君の提案書、わかりやすくてよかったよ」(まずは褒めてリラックスさせる)
部下「ありがとうございます」
上司「さて、来月で今期も終わるけど、数字的には厳しそうだね」(事実を話す)
部下「はい。申し訳ありません」
上司「謝らなくていいんだよ。頑張っているのはわかっているから」(信頼していること、きちんと見ていることを伝える。もしサボっているのならその部下はここで反省するはず)
部下「はい」
上司「営業活動の中で何か困ったことはある?」(成績を責めるのではなく、原因を探ろうとしている)
部下「新規契約がなかなかとれません。訪問はできるようになったのですが、クロージングには至らないんです」
上司「訪問できるようになったんだ。それは良かった。どんなふうに話を進めているのかな? 話の進め方とか提案の仕方を一緒に考えてみようか」(成長を認める)
まずは褒めて、リラックスさせれば、相談しやすい雰囲気ができます。やみくもに叱っても逆効果。成績の上がらない原因や問題点を見つけて解決を図るのが理想的です。
期日までに仕上げられない部下
「今朝までに」と頼んでいた仕事が仕上がってない。よくあることだと思います。イライラしてつい「なんで、間に合わないんだ!」とか、「君はいつもだな!この前も遅れたよな。いい加減にしろ!」と怒鳴ってしまう。部下は「すみません」と繰り返すばかり……。その場で否定するのは絶対にNG。必ず遅れた理由があるはずです。
よく遅れる部下は、往々にしてスタートが悪いようです。月曜日に「今週の金曜日15時には欲しいんだ」と頼んだら、期日の金曜日の朝からやり始めたりします。上司は、任せる仕事がどのくらいの時間で処理できるのか見積もって、時間配分をアドバイスしたり、進捗状況をチェックしたりする必要があるでしょう。
また、上司が例えば4時間と見積もったけれど、部下はその作成ソフトに慣れてなくて8時間かかることだってあります。さらに別件の仕事を抱えているのかもしれません。
ではこの場合、どのように話をもっていけばいいのか。好例を紹介しましょう。
部下「まだ、できていません」
上司「遅れている要因は何かな?」(「何」に焦点を置いているので本人への責任追及とは感じさせない)
部下「あれから見積り作成の依頼が2件も入ってきたものですから」
上司「そういうときはすぐに報告してよ。対応を考えるから」(部下の言い分を受け止める)
部下「わかりました。次回からそうします」
上司「では、いつ仕上がりそうかな?まだ他に急ぎの案件はある?」(他に抱えている仕事の確認)
部下「正午までに資料リストの作成が1件あります」
上司「では、明日の正午までで大丈夫かな?この件でわからないこととかあるかな?」(段取りの確認)
部下「はい、大丈夫です。疑問点もありません」
口先ばかりで動かない部下
意見はいいことを言うけれど、いざ、頼むと尻込みし、引き受けようとしない部下。いわゆる行動が伴わない部下も、やっかいです。「口だけでなく行動してもらわないと困るよ」と言ってしまうと、それは押しつけになり、部下は言い訳をして逃げようとするでしょう。
口先だけの部下には、なんとか行動する大切さを学ばせたいものです。まずは心理的に考えると、おそらく「自信がない」のでしょう。また、その仕事分野が苦手なのか、ミスをおかしたくないのか、責任を負いたくないのだと思われます。
そんな部下なら、こう言うのはどうでしょうか。「小林君がいい意見を出してくれたので、小林君中心に一緒にやってみようよ」と。この「一緒に」がポイントです。上司も一緒に責任を負ってくれる、フォローしてくれる、と安心感を与えることです。行動の一歩が踏み出せないタイプならなおさらこの「一緒に」と言われると、「やってみよう」と動き出すと思います。
※会話文の例は、吉田幸弘氏著『部下のやる気を引き出す上 司のちょっとした言い回し』(ダイヤモンド社)より抜粋・編 集しています