エスカイヤクラブ
会員様専用ページ

ビジネスアイ

Member deals

【2015年5号】 女性を活躍させるための メンタルケアのポイント!

ニュース

アベノミクスの成長戦略の一つとして掲げられている「女性の活用」。
読者の職場でも女性ならではの感性や能力、特性を
活かすことを考えていらっしゃることでしょう。
ところが女性をどう扱っていいのか分からないという声もよく耳にします。
そこで、メンタルな部分でどのような点に注意していけばいいのか。
ビジネスマン向けのメンタルケア、メンタルヘルスのコンサルティングで
多くの実績を持つ田村綾子氏にうかがいました。

 

「女性の活用」って本気ですか?

 かつては女性社員というと、高校や短大を出て「入社して数年したら寿退社する」ことが一般的で、多くの人が望む幸せの形でもありました。
 それが、女性の大学への進学率が上がり、1986年に男女雇用機会均等法が施行されてからは、女性も男性と同じように総合職や専門職を選択できるようになりました。
 そしてここ数年では、女性の管理職への登用が注目されています。「能力とやる気さえあれば、女性も男性と同じように昇進させるべきだ」「女性を活用できない企業は繁栄しない」といった類の言葉を日常的に耳にするようにもなりました。しかし、これら言葉は必ずしも事実とは言えない気がします。
 私は以前、講演先の大手企業に勤める女性たちから、こんな本音を聞きました。「産休を取って復帰しても居場所がない」「産休をフルに取ったら、今の自分の席がなくなる」と。実はこのような話は、いろいろな企業で聞きます。出産休暇や育児休暇が制度としてあっても、実際には女性が望むような機能は果たしていないのが現状のようです。
 「女性の管理職者はお飾りに過ぎない」という考えや言葉は好きではないのですが、現状がそのような状況であることは否めません。ある勉強会でお会いした女性から、「私はこれ以上、出世できないんです」と聞かされたことがあります。その方は大手企業で一つの部門の長をされている方でした。すぐに役員にもなりそうな方だったので「なぜですか?」と尋ねると、「未婚で子供のいない女性が役員になっても、会社のイメージにはつながりませんから」とおっしゃいました。食事の席でしたので、すべてが真実ではないと思います。ただ、ニュースなどでも働く女性がクローズアップされる場合、家庭と仕事の両立が謳われていたり、またはシングルマザーで頑張っているなど、「家庭のある人」が少なからず条件のような感じがします。
 管理職になったとしても、部長職以上になる女性は少ないように感じます。また、営業部などの最前線の部門での管理職の登用はあまり聞きません。管理部門での登用というと一見聞こえはいいですが、経営に対する影響力はさほど大きくないように感じます。
 このような状況を見ていると、「本気で女性を出世させようと思っている経営者がどのくらいいるのでしょうか?」と問い掛けたくなるのです。

 

リーダーを望まない女性たち上司も女性も「覚悟」が必要

 一方、女性側はどうなのでしょうか。
 接客業などに代表されるサービス業など、女性の活躍なしでは語れない仕事はもちろんのこと、今やあらゆる職場で収益を上げるには女性の活用は無視できません。
 そこで本気で女性の活用を考え、環境を整えることに力を注いでいる方もいらっしゃいます。しかし私の元には「女性を活用したいのはやまやまだけど、当の女性たちが出世を望んでいない」という声がたくさん届いていることも事実。現状に不満はなく、リーダーになってしんどい思いをするのは避けたいのです。仮に女の子的な扱いであってもそれに満足してしまっています。
 さらに女性のメンタリティにも問題があるような気がします。「仕事へのやる気は男性に負けません」という思いが強いがために、自分が果たすべき仕事以外まで率先して引き受け過ぎて体を壊してしまったり、「なぜ、こんなに頑張っているのに評価されないのだろう?」と悩んだり。
 さらに女性の中には、「上司といえども、納得がいかない指示には従いません」と公言するなど、「組織で働く」ということを理解していない人もいるようです。これは女性に限ったことではありませんが、男性に比べて、やはり女性が圧倒的に多いように思えます。
 古来、男性の活躍の場であった「職場」へ女性が参画することは容易なことではありません。まして、そこで活躍をしよう、活躍をさせようと思うのなら、男女双方にやはり覚悟が必要です。そこで、せっかく「女性の活用」をするならば、少しでも良い環境になるように、これから述べるポイントは押さえておきましょう。

201505_01

 

指示へのリアクションで、反論し続けることが多い女性
 男性の管理者から、「男性の部下は問題はないけれど、女性の部下は苦手なんです」という相談を受けることが多々あります。女性の部下を男性の部下と同じように扱うのが「平等」だと考える上司がいれば、その方は、間違いなく苦労されるでしょう。
 男性が、女性の部下を苦手だと思う理由はさまざまですが、よく耳にするのが、指示に対する反応の違いです。上司からの指示が自分の考えと異なった場合、男性の部下も女性の部下も自分の意見は上司へ伝えます。ただ、すでに上司が決断したことに対しては男性の部下は黙って従います。悔しい気持ちがあっても、「決断に至っては自分に開示されていない情報もあるのだろう。まあ、仕方ないか」とあきらめ、必要以上に傷ついたりはしません。
 女性の部下の場合、特に仕事ができる女性は「それはおかしい!」と反論意見を述べ続ける場面が多いようです。またその意見が正しいものだから、なおややこしい! 
 つまり正論をぶつけてくるのです。そして引き下がらない。これには男性の上司は面食らってしまうでしょう。それも次の理由を知れば納得できるはずです。

 

幼い頃からチームプレーに慣れていない女性

 男性と女性の反応や感性の違いは、子どもの頃の遊びの習慣の違いが原因の一つといわれています。男性は子どもの頃から野球やサッカーなど、チームプレーに慣れています。例えばサッカーの場合、いくら優れたストライカーであっても、監督の指示に従わなければレギュラーではいられません。監督の考えが正しいからとか、尊敬しているから従うのではなく、そういう仕組みだから従うということに慣れています。
 しかし、女性はチームプレーに慣れている人は多くありません。そのため、理不尽だと思う指示にはつい口をとがらせ反論をしたり、時に自分の意見が採用されなかったと、ひどく傷ついたりしてしまうことがあります。
 子どもの頃の遊びの違いは、他の場面でも見られます。昇進したての真面目な女性に多いケースですが、本来、自分が果たすべき仕事以外のことに手を出し、オーバーワークから体を壊すことがあります。役割以外の雑務を率先して引き受けることが職場への貢献だと感じているのでしょう。
 また、「こんなに頑張っているのだから、必ず評価されるだろう」と期待を持つものの思うような評価がもらえない場合、ひどく傷つきます。チームプレーに慣れている男性はそんなことはありません。例えば野球の場合、一番バッターの役割は出塁することであり、ホームランを狙うのではないことを知っています。ソロホームランを一本打ったところで、後に続かないのであれば、一番バッターとして評価はされません。
 さらに、男性から「女性の部下はすぐ感情的になるから苦手」と言うぼやきを聞きますが、これは単にその女性が組織で働く(=チームプレー)の意味を理解していないことが原因のように思います。感情的になる女性が苦手という男性は、まず女性の部下には「組織の仕組み」を伝えることから始めてはいかがでしょうか。

 

女性リーダーは徐々に育てることがポイント

 男性の場合はいきなり「今日から君がマネジャーだ」と伝えれば、多くの男性は喜び勇んで行動します。普段からそばで見ている上司を手本に、自分なりにリーダーとして取り組み始めるでしょう。
 ところが、女性はリーダーとしての素質があるものの、それを望んでいない場合が多いことは先ほども触れました。いきなり「今日から君だ」と言われても対応できません。AKB48の元メンバーで〝絶対的エース〟と呼ばれた前田敦子さんですら、プロデューサーに指名をされてセンターに抜擢された時は、一人だけ目立つのは嫌だと言って大泣きしたそうです。
 女性リーダーを育てる場合のポイントは「徐々に」がおすすめです。
 最初は、限定的なマネジメント業務を任せます。例えば、1人か2人のスタッフの指導を頼みます。その場合は「君がリーダーだ」とは言わずに「ちょっとお願いね」と。そしてうまくできたのなら人数を徐々に増やし、それもうまくこなせるようになって初めて「今日から正式にリーダーをお願いするよ」と伝えるのが効果的です

 

女性は「いつまでもあると思うな、温かい言葉と期待」を覚悟せよ

 企業で働く男性と女性の関係を私はよく日本人と外国人の関係に例えます。日本へ旅行で訪れた外国人に対しては、たいていの日本人は親切です。しかし、住むとなったら話は別。住居や職業の規制から始まり、目に見えない習慣まで日本のルールをかなり一方的に押し付けます。つまり、女性は昇進争いや決定権を持たない立場の時は優しくされますが、そうでなくなった時点で周りの態度は一変するという覚悟を持つ必要があります。
 もちろん、昇進直後は、「頑張れよ」「期待しているよ」「これからは女性の時代だからな」など、温かい言葉を掛けてもらえるでしょうが、いつまでもそのような状況は続きません。これは、レギュラー争いをしているライバルのチームメートにいつまでも「頑張れ」と応援する選手がいないのと同じことです。
 周りにいつまでも優しく接してもらいたいと思う女性は、レギュラー争いに参加せず、チアリーダーでいたらいいと思います。ただ、チアリーダーとして需要のある年数は、そう長くはありません。だからといって男性は、若くないチアリーダーに心無い言葉を掛けたら、即退場となります。レッドカードと違って、一試合休めばいい程度のペナルティーにはならないので、ビジネスパーソンは周囲への配慮と品格を常に保ちたいものです。

 

女性管理職者は意外、服装で悩む!?

 組織の仕組みなど、とうに理解し、上手く立ち回り、活躍をしている女性を目にする機会も増えてきました。年下の男性部下がいるという女性管理職者も増えてきたことでしょう。
 昨今は、再雇用制度の充実もあり、親子ほど年が離れた男性部下を持つ女性管理職者も私の周りにはたくさんいます。また、60歳を過ぎても会社から必要とされる有能な男性社員もたくさん知っています。女性の管理職者と年上の男性部下という関係は、周囲からするといびつに見えるようで、当事者たちはよく「苦労しないか?」と心配されるそうです。私も最初はそう思いましたが、杞憂に終わりました。考えてみれば、つまらない見栄や意地がある人は管理職者に抜擢されませんし、再雇用もされませんので、問題はないようです。
 ただ、女性が昇進すると、服装に困るようで、よく相談を受けます。どのような服装が好ましいかは、職種や環境にもよりますが、共通のルールはあります。いかにも女の子気分の服装では馬鹿にされてしまいますし、だからと言って男性のようなダークスーツで、化粧も施していない女性の意見は男性社会では積極的には取り入れてもらえないでしょう。
 あまり難しく考えず、服装は信頼できるお店のスタッフに選んでもらうことをお勧めいたします。よほどセンスに自信のある人は別ですが、お店のスタッフは流行だけではなく、働く女性の好ましい服装をよく心得ています。同様に、お化粧も自己流でなく、定期的に百貨店の美容カウンターに通い、アドバイスを受けながら決めると外れがありません。どちらも無料で行えるものなので、ぜひ試していただきたいです。

 

女性の隠れた才能を見出すには

 ビジネスの中心は男性ですが、消費者の中心は女性です。旦那様の収入額にかかわらず、財布を握っているのは奥様というご家庭は珍しくありません。旦那様が運転する車を購入する場合でも、奥様の意見が反映されないケースは稀だと思います。自宅や別荘、ゴルフ会員権に至るまで、奥様の意向を完全に無視して購入できるものは意外と少ないのではないでしょうか。
 自社内の女性の意見を聞くということは、「お金を使うプロ」の意見を聞くことと同じことだと考えてください。自社内の女性の意見をうまく吸い上げ、取り入れることができれば、企業の繁栄にもつながります。もちろん、始めのうちはうまくいかないことも多いかと思います。女性社員に意見を聞いたものの、「感性でモノを言われてもなぁ」とか、「それだと利益が出ないんだよなぁ」など、すんなり意見は採用できないかもしれません。
 女性側も、いきなり「女性の意見を聞きたい」と言われても、戸惑う女性社員は多いはずです。まずは、ブレーンストーミングのように、話がまとまることを求めずに意見を言ってもらう場を作ることから始めてみましょう。女性社員を「女の子」扱いしていては、その女性はいつまでも「女の子気分」が抜けませんが、「信頼できる社員」として接すれば、その女性は必ず期待に応えてくれるはずです。